「予測ダンピング」という技術も保有している。似たようなシステムが存在するが、ZFのそれは路面状況をセンシングして減衰力を調整するシステムを意味するが、そのセンシングに安全運転支援のカメラを用いていることが特長である。これはメガサプライヤーとしてクルマの機能部品にトータルで携わっていないとできない技術のひとつだろう。
ZFのショックアブソーバーは、「職人技」「最先端技術」「メガサプライヤーとしての応用力」などの強みがある。このほか、モータースポーツの世界では1937年に同社のダンパーとクラッチを搭載した「メルセデス・シルバーアロー」が連勝を重ねて以降、レースはF1からツーリングカー、ラリーではWRCからラリーレイドまで幅広く活動を行い、世界で数々の成功をおさめており、最近ではフォーミュラEへの供給も行う。
これらの活動で得た知見や技術は量産へのフィードバックのためだが、逆に量産からモータースポーツへのフィードバックもあるそうだ。つまり、「極限」と「多様化」のバランスもZFの強みなのである。
日本ではスポーツ系のモデルへの装着がメイン
ただ、残念なことに日本ではZFのブランドは消費者にしっかりと浸透していない。良いショックアブソーバーでいえば、ビルシュタインのほうが圧倒的なブランド力がある。
理由の1つは欧州車には普通のクルマに当たり前に装着されているが、日本ではホンダ・シビックタイプRやトヨタ86/スバルBRZ、レクサスRC F/GS Fなどのスポーツ系のモデルへの装着がメインだということもあるかもしれない。最新のホンダ「オデッセイ」や「ヴェゼル」など普通のモデルにも展開され始めていることを、どうアピールしていくかは課題だろう。
ちなみにZFのショックアブソーバーの工場があるシュバインフルトを日本語に訳すと「豚の街」だそうだ。豚はドイツの味のひとつであるソーセージの材料だが、ショックアブソーバーはクルマの味を作る材料のひとつ……。これは偶然なのか必然なのか。
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