ECB、量的緩和策の2018年内終了を決定 金利は2019年夏まで現在の水準に据え置き

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6月14日、ECBは理事会で、量的緩和を今年9月以降は月間150億ユーロに縮小し、年内に終了する方針を決定した。金融危機を受け導入した措置の解除に向け大きな一歩を踏み出した。写真は2016年、フランクフルトのECB(2018年 ロイター/Ralph Orlowski)

[リガ/フランクフルト 14日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で、量的緩和を今年10月以降は月間150億ユーロに縮小し、年内に終了する方針を決定した。金融危機を受け導入した措置の解除に向け大きな一歩を踏み出した。

声明では「9月末までは月間300億ユーロの現在の買い入れを続け、それ以降はデータが理事会の中期インフレ見通しを確認するものとなれば、買い入れ規模を12月末まで月間150億ユーロに縮小した後、終了すると想定している」とした。

金利については「少なくとも2019年夏にかけて、さらにインフレ動向が持続的な調整の道筋を巡るわれわれの現在の予想に沿い続けることを確実にするために必要な限り、現在の水準にとどまる」との見通しを示し、買い入れ策を終了させても早急に急激な政策引き締めには動かない方針であることを示した。 2019年10月に任期が切れるドラギ総裁が8年間の在任中に一度も利上げを行わないまま退任する可能性も出てきた。

ECBは主要政策金利を予想通り据え置いた。リファイナンス金利は0.00%に、限界貸出金利は0.25%に、中銀預金金利はマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。

市場ではECBは19年6月までに中銀預金金利を10ベーシスポイント(bp)引き上げるとの見通しが織り込まれていたが、今回の理事会を受け、ECBが初めての利上げに着手する時期の予想は19年9月に3カ月間後ずれした。

ECBの新たなガイダンスを受け、外為市場ではユーロ/ドル<EUR=EBS>が1.1644ドルと約1%下落。1日の下落としては昨年10月以来の大きさとなる。

ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、今回の理事会では「利上げの時期について討議しなかった」とし、「堅調な経済と先行き不透明性の増大が並存する中で今回の決定を行った」と述べるにとどめ、利上げの時期を巡る詳細については明らかにしなかった。

ECBは声明で、金利は少なくとも2019年「夏にかけて」現行水準にとどまると表明。ドラギ総裁は「夏にかけて」との文言について、「もし9月という意味であれば、実際にそう書いていただろう。われわれが言いたいのは、経済が好調を呈すると同時に不透明性が増す中で今回の決定を下しており、『夏にかけて』というのは意図的に時期を特定しないということだ」と説明。

先行き不透明性とリスクは増大しているとし、「この日の決定のすべての側面において選択肢を維持したい」とし、このため金利は少なくとも19年夏まで現行水準にとどまるとの見方を示した。

見通しに対するリスクを反映し、ECBは最新のスタッフ予想で、今年と来年のユーロ圏のインフレ率の見通しを引き上げた一方で、今年の成長率見通しを下方修正。今年と来年のインフレ率はともに1.7%になるとし、従来の1.4%から引き上げた。経済成長率については、今年は2.1%になるとし、従来の2.4%から下方修正した。

ユーロ圏では原油高や為替相場の動向を受け輸入価格が上昇し、これが徐々に消費者物価に反映され始めている。一方、保護主義を巡る懸念などが経済成長に対する重しとなっており、ECBの成長率見通し引き下げにつながったものとみられている。

政策の完全な正常化には何年もかかると予想されるものの、世界の主要中銀は緩和策を引き揚げていくとの見方が市場では織り込まれており、前日には米連邦準備理事会(FRB)が利上げを決定すると同時に、声明から景気刺激に向け金利を十分に低い水準にとどめると確約する文言を削除している。

FRBは2013年12月にテーパリング(量的金融緩和の段階的な縮小)を開始したが、量的緩和終了の具体的な期日のほか、その後の措置などについては明示しなかった。ECBは今回、買い入れ策終了の具体的な期日を示したことで、FRBより踏み込んだ措置を取ったと言える。

ただ、貿易戦争の懸念や、イタリア新政権の行方や輸出需要の軟化などを背景にユーロ圏経済の先行き不透明感が出ていることで、ECBは難しい舵取りを迫られる可能性がある。

ただ、イタリア銀行(中央銀行)総裁を務めたドラギ氏は、イタリアで見られている問題は地域的なもので、政権交代は通常のマーケットイベントに過ぎないと指摘。ユーロ圏債務危機時に見られたような広範な市場のパニックとの違いを強調し、イタリアの問題が他に波及することはないとの認識を示した。

この日のECBの決定について、マーケッツ・ドットコムの首席市場アナリスト、ニール・ウィルソン氏は今回の決定について、「量的緩和(QE)についてはややタカ派的、金利についてはむしろハト派的という絶妙なバランスを取った。ドラギ総裁は市場の見方の均衡を保ち、いわゆるテーパータントラムを回避しようとしている」と指摘。JPモルガンのエコノミスト、グレッグ・フゼシ氏は「金利を巡る決定はハト派的だったが、量的緩和については双方向への柔軟性を残したと言える」と述べた。

このほか、BNPパリバのエコノミスト、ルイジ・スペランサ氏は「昨日のFRBは非常にタカ派的だったが、きょうのECBは非常にハト派的資産買い入れ策の終了を発表することを選択した」と指摘。ノルデアのエコノミスト、ヤン・フォン・ゲリッチ氏は「買い入れ策の終了は非常に緩和的な金融政策の終了を意味するわけではない。ドラギ総裁の記者会見はハト派的で、われわれはECBは19年12月まで利上げに踏み切らないと予想している」と述べた。

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