「企業業績から見れば、日本株に魅力あり」

運用最大手ブラックロックの副会長に聞く

「ダウンサイドリスクはあるものの、企業業績から見れば日米ともに株価は値ごろ感がある」とヒルデブランド氏は語る(写真:ロイター/Thomas Peter)
2018年に入って長期金利が上昇し、2月の米国株価下落、5月のイタリア政局に端を発した株価の連鎖的な動揺など、市場ではボラティリティ(変動率)の高まりが見られる。世界最大手の運用会社であるブラックロックの副会長で、元スイス国立銀行(中央銀行)総裁のフィリップ・ヒルデブランド氏に世界経済の見通しや運用戦略を聞いた。

 

——世界経済の見通しは。

ヒルデブランド 世界経済は依然として持続的な成長を続けている。10年の時を経てようやく金融危機からの回復の最終段階に入っている。日本や中国を含め、ほとんどの地域の経済は堅調であり、世界経済の成長に貢献している。今年に入って株式市場にボラティリティの高まりが見られるが、基本的に世界経済が回復基調にあることに変わりはないだろう。

——ボラティリティの高まりは、FRB(米国連邦準備制度理事会)の金融政策が出口に向かっていることによるバブルの崩壊の予兆ではないかという見方もあります。

ヒルデブランド 私は現状がバブルの状態ではないと考えている。米国を中心に現在の株価は、企業の収益成長を伴っている。ただし2018年に入って、状況はかなり複雑になっており、ボラティリティが上昇している。これは米国の2つの政策によるところが大きい。

1つは通商政策の問題だ。対中国を発端とした貿易戦争を引き起こすような政策が、世界の貿易体制を根本から揺るがすリスクがある。

もう1つは、景気が拡大しているにも関わらず大幅減税や財政支出の拡大といった大規模な景気刺激策を行うという点だ。この刺激策の大きさは2009年に行われたものとほぼ同規模になる。経済が堅調で完全雇用に近く、金融政策が出口に向かう中で、こうした財政刺激策をとるということは、相反する2つの政策を行うことになる。そのことがリスクを高めている。

この2点の問題をどう評価するのかを市場は測りかねており、ボラティリティが高まっている。

リスクは金融政策より貿易摩擦にある

——金融政策が出口局面に入っていることで、考えられるリスクは?

ヒルデブランド 世界経済も米国経済も金融政策の正常化に耐えうるだけの強さを持っている。ただし、貿易摩擦によるリスクは大きい。数十年間にわたって継続してきた秩序に基づく通商制度が根本的に変わってしまう可能性がある。従来のような国際的な枠組みで管理された通商制度ではなく、保護主義的な形で、ある国や地域が一方的に関税を設定するという形になった場合、貿易障壁に伴う直接的な影響のみならず、貿易そのものに対する信頼感が損なわれる。

世界のサプライチェーンの仕組みも崩れてしまう。今日の企業活動では、組み立てや製造と言ったプロセス、生産も出荷も消費者の購買も非常に複雑でグローバルなサプライチェーンの中で成り立っている。世界経済全体から見ると、保護主義的な政策が取られ、それに対抗する措置が取られるという連鎖を避けることは、非常に重要な課題となる。

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