米国は2019年に景気後退に入る可能性が高い BNPパリバの米国チーフエコノミストに聞く

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「米国や欧州では中国に対する恐怖とパラノイアが増している」とモーティマリー氏は懸念する(写真:ロイター/Kevin Lamarque)
ゴルディロックス(経済は拡大しているが金利が上昇するほどでない状態を「適温」と評したもの)と呼ばれた2017年の経済、相場。しかし、今年2月以降は米国の株式市場も調整局面に入った感がある。世界経済のリード役である米国経済はどこに向かうのか。ドナルド・トランプ大統領の動向とその影響を含めて、BNPパリバ証券の米国担当チーフエコノミスト、ポール・モーティマリー氏に聞いた。

 

――今年2月、長期金利の上昇をきっかけにして米国の株式市場は調整局面に入りました。米国の景気拡大はいつまで続きますか。

ポール・モーティマリー(以下、モーティマリー):少なくとも年内は景気拡大が続く。今回の拡大期間はすでに過去2番目の長さに達したが、減税政策によって景気が刺激されるため、まだしばらく続く見通しだ。ただ、2019年中にも景気後退に入るリスクがある。財政支出や法人減税、規制緩和などの効果が剥げ落ちて、2019年には財政政策のGDP(国内総生産)成長率押し上げ効果が0.2%(18年1%予想)に減速すると見られるからだ。労働力を中心とした経済資源の不足が成長の制約要因となるうえ、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げが継続し、景気拡大を止めるかもしれない。

――米国の賃金上昇率が加速すると予想していますね。

モーティマリー:なぜなら生産性やインフレ率が上昇しており、賃金上昇に作用するからだ。労働市場も非常に引き締まっている。私は2つの指標に注目する。失業率と労働参加率だ。足元の労働参加率はまだ2007年の水準を回復しておらず、まだ全員が労働市場に戻っていない。その意味では、まだ労働需給にはスラック(緩み)があるのだが、そのスラックの減少が加速している。もっとも賃金上昇率が加速するといっても、そんなに速いものではない。今年の賃金上昇率は、2017年平均の2.5%を0.4~0.5%上回る程度だろう。

財政拡張も長期金利を押し上げている

――米国の長期金利は足元で3%前後までジリジリと上げています。

モーティマリー:2つの要因がドルの長期金利を上昇させている。1つは、財政赤字の拡大で国債発行が増えていること。2つ目は、グローバルでQE(量的緩和=中央銀行が市中から大規模に国債などを購入すること)が減っていることだ。1つの側面として、より多くの資金が政府の負債に向かうと、株式や社債、新興国市場に向かう資金は減ることになる。つまり低金利終焉のリスクは、政府が市場から資金を吸い取ってしまって、ほかの資産価格が下落(金利は上昇)することだ。社債などの金利を上昇させ、景気を減速させることになるだろう。

――一種のクラウディングアウト(締め出し)ですね。最近はこの言葉を聞くことが減っていましたが。

モーティマリー:そうだ。金融的なクラウディングアウトだ。すでにトリプルB格の社債スプレッド(国債対比)は底を打ち、ワイドニングを始めている。もっともドル金利の上昇はマイルドなものにとどまるだろう。

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