米国は2019年に景気後退に入る可能性が高い BNPパリバの米国チーフエコノミストに聞く

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ポール・モーティマリー(Paul Mortimer-Lee) /BNPパリバのチーフマーケットエコノミストおよび北米担当のチーフエコノミスト。イングランド銀行での経済分析・予測と構造分析の担当を経て、1995年からBNPパリバ。IMFにも勤務経験。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の経済学士号、金融修士号取得

――米国経済にとってリスクシナリオとは何ですか。

モーティマリー:2つある。

1つは金融ショックだ。株価上昇などの資産効果が家計の貯蓄率低下を促す形で、米国の個人消費の増加は極度に資産価格上昇に依存している。仮に株価が20%下落すれば、貯蓄率は上昇に転じるかもしれない(その分、消費性向は低下する)。

2つ目のリスクは、貿易戦争だ。現在のメインシナリオでは、貿易戦争は実質的に解決されないものの、GDP成長率の押し下げ効果は0.1~0.3%にとどまると見ている。

だが、もしそれが間違いで、貿易戦争がエスカレートし、企業や家計の心理を直撃すれば、貿易だけでなく投資も落ち込むことになる。破壊的なシナリオと言える。

貿易戦争で米国が受ける傷は相対的に小さい

――関税引き上げのシミュレーションの結果があります。内容を教えてください。

モーティマリー:オーストラリアの研究者によるもので、機械的に各国が10%関税を引き上げたら、GDPにどれくらい影響があるかを見たものだ。表の縦軸が関税を10%引き上げる国、横軸がGDPで影響を受ける国となっている。これを見るとわかるように、米国の関税引き上げで悪影響を受けるのは、カナダ、南米、日本・中国・インドを除くアジア諸国、中国の順だ。縦軸の一番左側は、貿易戦争がエスカレートしてグローバル全体で関税を10%引き上げた場合だが、はっきりしているのは、米国の傷が一番浅いということだ。米国はGDPが巨大なので輸出の占める割合が小さい。それが米国が有利になる理由だ。反対に中国とドイツは相対的な敗者となる。

――トランプ大統領はそれを理解して仕掛けているわけですか。

モーティマリー:たぶんそうだと思う。彼は、米国は失うものがいちばん小さいと考えている。だから、貿易戦争を仕掛けると脅すことで、他国から大幅な譲歩を引き出そうとしているわけだ。

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