イタリア新政権誕生で始まる「EU離脱」の序章 ポピュリスト・極右政権発足が意味すること
1972年、米ホワイトハウスとイタリア経済とが非常に緊迫していた時代に、リチャード・ニクソン米大統領がイタリアの通貨の運命を考えるよう求められ、怒鳴り返した言葉は有名である。「リラなんて知ったことではない!」ウォーターゲートの苦難の最中に録音された彼の言葉は、世界の偉大な人々にとってイタリアが些末な問題であることを示している。
これは現在の出来事ではない。リラはすでになくなっている。1999年1月1日にイタリアがユーロ圏に参入すると、イタリアは大国が関心を持たねばならない国となった。英国のEU離脱後には、イタリアはEU(欧州連合)で第3位の経済大国となる。さらに名目GDPは約2兆2千億ドル、人口は6千万人と世界では第8位となる。
イタリアは北大西洋条約機構(NATO)とG7の参加国でもある。かつて2兆6千億ドル以上もの公債で債務不履行となっていたとしても、イタリアはギリシャのようには「救済」されなかっただろう。だが現在、EUとその加盟国は、イタリアを (イタリアそのものから) 救うという問題に直面している。
新政権を形作る2つの政党
加盟国の真正面には、悪夢のような、イタリアの新連立政権が立ちはだかっている。この政権は2つの党からなる。一方は3月4日の結論の出なかった総選挙で最大の得票率を獲得した五つ星運動で、コメディアンのベッペ・グリッロが、インターネットによって直接民主主義が可能となり、議会と議員とは時代遅れのものになるという考え方を打ち出し、2009年に結党した。
現時点では、議会と議員に取って代わるという革命的な計画のほとんどを先延ばしにしつつ、五つ星運動はベーシックインカムなど大衆受けする政策をごたまぜにして採用している。
同政党の政策を右か左かに分類することは難しいが、非常にカネがかかることは確かだ。五つ星の党首ルイジ・ディマイオは優雅に着飾り、つねに笑みを浮かべており、自国の富を取り戻し、党に3分の1近い票を与えた大衆の不満に取り組むという高支出計画は、EUと両立可能であると穏やかに確信しているようだ。