京急の「テロ対策訓練」は、徹底的にリアルだ JR東海もさまざまな訓練を行っているが…

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ガスの有無をチェックしながら慎重に歩く黄色い化学防護服を着た消防隊員(撮影:今井康一)

6月9日に起きた東海道新幹線「のぞみ265号」車内での殺傷事件は、多くの人が集まる駅や列車内がテロの標的になりやすいことを再認識させた。1995年3月には都内で「地下鉄サリン事件」が起きている。営団地下鉄(現・東京メトロ)で起きた凄惨(せいさん)な事件は今でも忘れることはできない。

こうした危機に備え、鉄道各社は警察、消防と連携しながら定期的に訓練を行っている。6月5日、京浜急行電鉄が京急川崎駅で実施したテロ対策訓練を密着取材した。

訓練は年々スケールアップ

11時16分、駅のホームに黄色い化学防護服を身にまとった3人の消防隊員が姿を見せた。日常の駅の風景が非日常に変わった。訓練だということがわかっていても、否応なく緊張感が高まる。

京急は都心と羽田空港を結んでいることもあり、鉄道各社の中でもとりわけテロ対策に神経を使う。2020年の東京五輪を控え、テロ対策訓練を毎年実施している。

今年の訓練のテーマは化学テロ。京急大師線・京急川崎―小島新田間を走行中の列車内で液体の入ったビニール袋が見つかり、乗客がめまいや吐き気を訴え、京急川崎駅に停車した列車から乗客を安全な場所に誘導し、不審物を処理するという想定だ。

参加者は約230人。鉄道関係者だけでなく警察、消防、さらに駅構内のコンビニ店員も訓練に加わった。数年前に実施されたテロ対策訓練は参加者が六十数人にすぎなかった。訓練は年々スケールアップしている。

訓練開始前、ホームに止まっている列車内に乗客役を務める京急の社員が続々と乗り込む。ドア脇には透明なビニール袋に入った茶色い液体が置かれた。これが不審物という想定だ。ちなみに、茶色い液体の正体は「普通のお茶」(京急広報)という。

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