京急の「テロ対策訓練」は、徹底的にリアルだ JR東海もさまざまな訓練を行っているが…

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緑色の防護服を着た隊員は、危険度の低い場所で対応する(撮影:今井康一)

隊員は車内に乗り込むと乗客3人の肩を抱いて、車外に連れ出した。待機していた別の救急隊員が3人の乗客の体調を確認する。「本来なら乗客全員を別の場所に待機させておき、もっとたくさんの救急隊員が出動して全員の体調を確認します」(吉田氏)。体調チェックがないまま改札を抜け、後日体調を崩す人が出るのを防ぐためだ。

さらにその数分後、警察のNBCテロ対応専門部隊4人が姿を見せた。隊長から指示があるたびに隊員が腕を軽く上げ、ガッツポーズのようなしぐさをする。「了解」の意思表示のようだ。マスク越しで言葉が聞き取りにくいうえに、ちょっとした手順のミスでも命取りになりかねないので、口頭だけでなく動作でも確認の徹底をしているのだろう。

不審物を処理する警察の専門部隊(撮影:今井康一)

11時38分に不審物を特殊な容器に入れ終え、訓練は無事終了した。訓練後の講評で川崎警察署の増田勝署長が「日頃の訓練が重要だ」と述べたが、これは鉄道会社だけでなく、警察自身にも当てはまるのだろう。

「鉄道に限らず、人がたくさん集まる場所はテロの標的として狙われやすい。できるだけ多くの場所で訓練をしたいと考えています」(吉田氏)。テロ対策訓練は、鉄道会社だけでなく、警察や消防にとっても貴重な訓練の機会である。しかし、このような大掛かりな訓練は集客施設側の事情もあり、なかなか実施できないのが実情のようだ。

乗務員が不審者と対決するのは困難

今回のように京急のテロ対策訓練はかなり入念に行われている。では先日の新幹線の殺傷事件のような、刃物を振り回す不審者に対処する訓練は行われているのだろうか。京急側は「乗務員の役割は、乗客に危害が及ばないように不審者から乗客を遠ざけ、安全な場所に誘導すること」と述べる。列車内で乗務員が不審者を取り押さえる訓練は行われていないようだ。確かに、格闘術や護身術を身に付けていない乗務員が不審者に立ち向かうのは難しいだろう。

列車を最寄りの駅に止めて乗客を避難させた後の対応は、警察に委ねるというのが精いっぱいかもしれない。駅構内では、警察官が模造ナイフを持つ不審者を取り押さえる訓練は定期的に実施されている。

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