「名ばかり産業医」がマイナスでしかない理由

おカネを出して選任するメリットを考えよう

産業医の役割が増しています(写真:metamorworks / PIXTA)

社員数200人、平均年齢30代の広告会社、A社。この企業は広告業という職種の特性もあって非常にハードワークで、ストレスも高く、メンタル不調で休職する社員が毎年1~2人出ているという状況でした。

しかし数年前、人事部長が代わった際に、メンタル疾患に詳しい産業医に契約を変更。新しい産業医の指示により、人事が社員の心身の状況についてこまめにヒアリングを行うようにし、心配な言動があればすぐに産業医につなぐ体制をつくりました。

コミュニケーションに困難があるような社員については、部下を置かずに本人のペースで仕事ができる職種にするなど、その人の強みを活かせる職種・配置を産業医が人事に提案するようにしました。そうした対策の結果、毎年出ていたメンタル休職者が、現在はゼロになったということです。

止まない過労死、過労自殺――。国もこの状況にメスを入れようとしており、現在働き方改革関連法案は参院本会議で審議中です。時間外労働に罰則付きの上限を設け、長時間労働そのものを規制するとともに、長時間労働者や高ストレス者に対して「医師による面談」を義務付けるなど、事業所における働く人の健康対策を強化する方針が打ち出されています。

ここで重要な役割を果たすのが「産業医」。拙著『企業にはびこる名ばかり産業医』でも訴えてきましたが、今、健康経営や働き方改革を実現するうえで、産業医の指導による働く人の健康対策の充実が求められているのです。

そもそも産業医は何をするのか

そもそも産業医の役割とはなんでしょう。産業医を端的に言うと、「働く人の健康を守る専門家」。働く人の労働環境を把握するための定期的な職場巡視、長時間労働者や高ストレス者への面接指導、休職・復職する人の支援、そしてもちろん健康診断結果のチェックまで。治療をするのではなく、事業所において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言をします。

産業医は、労働安全衛生法により常時50人以上の労働者を使用する事業所で選任が義務づけられています。労働者が50人以上1000人未満の事業所は、非常勤の嘱託産業医でもかまわないことになっていますが、1000人以上の職場では常勤の専属産業医を1人以上、3001人以上の職場では、2人以上の専属産業医を選任する必要があります。

※有害業務に500人以上の労働者を従事させる事業所は、専属産業医の選任が必要

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