「名ばかり産業医」がマイナスでしかない理由 おカネを出して選任するメリットを考えよう

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法律で義務となっている産業医ですが、残念ながらすべての企業でその法律が順守されているわけではありません。産業医選任率は、1000人以上の事業所で97.7%、50~99人の事業所で71.5%。0~99人規模では約2割にあたる2万件近い事業所が産業医を選任していません。(参考:2016年度労働安全衛生調査、2014年経済センサス(一部推計含む))

企業にはびこる名ばかり産業医

さらに同調査では、法律どおり産業医を選任していても、産業医の活動が規定を満たしていないというケースがかなりの割合で存在することもわかりました。

たとえば、産業医は原則、月1回以上の職場巡視をすることが定められています。しかし、同じく厚生労働省の2016年の労働安全衛生調査から推計すると、産業医が年12回以上の訪問をしている事業所は約3.5万件程度。産業医の選任義務のある労働者50人以上の事業所数は全国で約16万件なので、産業医が規定どおりに訪問を行っているところは2割ほどに留まります。

特に事業所の規模が小さく(労働者数が少なく)なるほど、訪問回数も少ない傾向にあり、特に100人未満の事業所では約2割が「訪問回数年0回」、つまりまったく訪問をしていないという結果。これは、産業医の名前の届出があるだけで活動実績がない、いわゆる「名ばかり産業医」の存在を表しています。

なぜ「名ばかり産業医」がはびこるのでしょうか。その大きな原因は、企業が産業医を選任するメリットを理解せず、法律を守ることが目的になってしまっているからだと考えられます。つまり、産業医の選任を義務としてのみとらえてしまっているのです。さらには、雇用している労働者を大切に思っていない企業も、残念ながら少なくはないでしょう。「休退職者がでたとしても、新しい人を雇えばいい」という感覚が多少なりともあり、法律さえ守れていれば産業医が機能しなくても構わないと考えている可能性もあります。

産業医側の意識にも問題があります。名前だけ貸して、実際には企業へ訪問しなくてもよいとなれば、産業医にとっても「楽に稼げる」ということになります。企業と産業医のWIN-WINの関係で、「名ばかり産業医」が生まれているというケースも、このように存在します。

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