摂食障害だった女性が語る「過食嘔吐の絶望」 「カビの生えたパンも平気で食べた」
頭の中は、食べることに支配されて行動はますますエスカレートしていく。
「私は社会的に許されないようなことも、なりふりかまわずという姿勢になっていました。そして、ついにある日、私のしたことに、“こんなになるまで放っておいてごめんね”と母が悲しそうな声で言いました。父さえも怒り、そして泣きました」
通院は逆効果だった
そこで初めて、母親が彼女を病院へ連れて行く。摂食障害の治療に関しては評判が高いと言われる心療内科と、そのクリニックと提携しているカウンセリングだった。
「私にとってそれは、むしろ逆効果でした。1時間近く待って5分程度の診察。何回食べ吐きをしたか、体重、精神状態を聞くだけ。医者は“生活に支障がないくらいに体重を戻して、食べ吐きをできるだけしないようにしましょう”というスタンスでした。
カウンセラーのことは大嫌いでした。私に同情し、見下されているように感じました」
その怒りから、ますます過食への衝動が強くなった。当時、体重は29キロ~30キロ。
「その体力では夏を越せないだろう、という医者のすすめで、目黒にある総合病院に入院することになったんです。摂食障害の治療ではなく、生活パターンの改善と体力温存が目的でした」
1日1200キロカロリーの食事をして体重を増やす、規則正しい生活をして昼夜逆転を直す、というものだった。しかし、ここでも過食嘔吐の衝動は止まらなかった。
「私の行動はひどかったです。看護師の目を盗んで、ほかの患者の残飯をビニール袋に入れ、自分の棚に隠し持ちました」
それを食事の時間に一緒に食べ、それでも足りずに、病院の売店や勝手に外出してスーパーでも食べ物を買い、公園のトイレや、点滴をしたまま病院のトイレで吐いた。
1か月ほどで無理やり退院し、自宅に帰るとまた元の生活に戻った。彼女の精神は、もはや極限状態だった。
「楽しいもうれしいも、悲しいも苦しいも、何もいらない。たったひとり、誰とも関わらずに忘れ去られたい。眠りにつくとき、このまま意識が戻らなかったら、どんなに幸せだろうと思いました。眠りから覚めると、自分の人生が八方塞がりで、どこにも行き場がないことに絶望しました」