「固定資産税」の実は不公正で危うすぎる実態

古い公図に頼り、所有者不明にも有効策なし

そこで、改めて区役所に行くと、個人の測量図では修正はできないという。それは、隣家の立会いなどをして正式に測ったものとはいえないためで、役所にある「公図」が優先するというのだ。そして、わが家の敷地が小さく載っている公図を出してきて、縮尺定規を間口の部分にあて、2.5mあると示した。家に来ればわかるので来てほしいと言っても動かない。

ただ、正式に測った測量図が法務局に届け出られていることがあるので、調べてもらうことになった。後日、それが見つかり、間口は2.1mと確認することができた。これによって、過去7年にわたって払いすぎていた固定資産税が戻ることになった。

このように、固定資産税のもとになる土地の評価で使われる公図はあてにならない。それは、公図が明治初期に作られたものだからだ。明治政府は、江戸時代の年貢から、土地にかかる税金として「地租」を集める制度に変えた。その際に、課税の基礎として作ったのが公図だ。

測量技術もさることながら、公図は、「縄伸び」といって課税を軽くするために実際よりも狭く描かれていたり、逆に「縄縮み」といって高く売ることなどをねらって実際より広く描かれていたりすることがあると知られている。国家体制の確立を急ぐ明治政府の目を盗むごまかしが横行していたといわれる。

国も公図が不正確であることを認めており、1951年から「地籍調査」を始めている。国の「地籍調査Webサイト」には「境界や形状などが現実とは異なっている場合が多くあり、また、登記簿に記載された土地の面積も、正確ではない場合がある」と、調査の必要性が書かれている。

ところが、境界線の画定が難しい都市部を中心に、半分近くが未着手で残っている。調査が終わった場所の91%は農用地と林地なので、宅地や商業地など、都市部の土地には一部しか手がついていない。

山林の公図の信頼性はさらに低い

ここで話を吉見町に戻そう。冒頭の比企ネオポリスの公図を調べると、現地とはまったく違う。ある場所では175平方メートルの土地が422平方メートルの土地より大きく描かれ、縦長の土地が横長に描かれているような場所も珍しくない。比企ネオポリスは、1960年代に約80ヘクタールの山林を切り開いて造成された。山林の公図の信頼性は利害関係者が多い都市部に比べて、さらに低いとされる。

これでは先述の固定資産税の補正の図面としては使いようがないだろう。町に聞くと、最初は「市街化調整区域なので補正は適用していない」と答えた。比企ネオポリスは、約6000区画といわれる宅地分譲が終わったころに販売会社が倒産してしまう。当時は高度成長期の土地ブームの時代。乱開発を抑制するための都市計画法が1968年に施行されると、一帯は市街化調整区域に指定されてしまった。

自治会関係者によると、一時は上下水道や道路の整備もできておらず、移り住んだ人たちが自力で整備したこともあったという。当時から社会問題になり、1966年には参院予算委員会で、使っていた井戸の水が足りずに給水車で対応している実態が取り上げられたほどだ。

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