「固定資産税」の実は不公正で危うすぎる実態 古い公図に頼り、所有者不明にも有効策なし

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では、市街化調整区域なら補正は不要なのか。調べると、埼玉県宮代町で今年3月、市街化調整区域内の宅地に必要な補正をしてこなかったため、過去10年にわたって集めすぎた固定資産税を返すと公表していた。2017年度分だけで1121人分の計約520万円になるという。

このことを吉見町に確認すると、一転して、市街化調整区域でも補正が必要なことを認めた。また、空き地の固定資産税についても、価値が低くて課税最低限に達する評価に至らない「原野」の扱いで課税していないことを認めた。

市街化調整区域でも比企ネオポリスには2000世帯余りが住んでおり、固定資産税は払っている。この地域を含めて市街化調整区域は町の面積の95%超を占め、2万人近い人口の4分の3以上が住む。こうした人たちに、宮代町同様、「正しい固定資産税を計算したうえで返すべきは返す」という。

いかにして正しい税額を計算するのか

しかし、正しい図面がないのに、いかにして正しい税額を計算するのか。同町税務会計課は、「正しい図面を作って課税する」というが、空き地に課税してこなかったために所有者と連絡すら取れていない土地も多い。多くの空き地が、所有者さえわからない状況にある。正しい測量をするためには、隣地の所有者の立会いが必要だが、それすらままならないということだ。

国土交通省が発表した2018年版の首都圏白書によると、長期不在の空き家は都心の30キロ圏より外側で明らかに増えた。人口減と都心回帰で、比企ネオポリスのようなベッドタウンとして開発された郊外のニュータウンは急速に寂れている。こうした空き地、空き家は所有者不明問題とあいまって、市町村税の半分を占める固定資産税の根幹も揺るがせている。

松浦 新 朝日新聞記者

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まつうら しん / Shin Matsuura

1962年愛知県生まれ。東北大学卒業後、NHKに入局。1989年朝日新聞入社。東京本社経済部、週刊朝日編集部、特別報道部、経済部などを経て、2017年4月からさいたま総局。共著に『ルポ 税金地獄』『ルポ 老人地獄』(ともに文春新書)、『電気料金はなぜ上がるのか』(岩波新書)、『プロメテウスの罠』(学研パブリッシング)ほか。

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