ワークマンがついにカジュアル店を出すワケ バイク乗りや妊婦に「機能性ウエア」が人気

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女性向けウエアも品揃えする。建設現場は男性中心のため、そこから派生したカジュアルラインも男性向けが中心だが、ワークマンでは建設系以外の職種に向けた衣料の開発も進めており、その中から一般ユーザーへと浸透し始めている商品もある。

業務用のエプロンは撥水加工や難燃防汚処理で丈夫にできており、ガーデニングなど一般ユースでも便利。厨房用の滑りにくいシューズはブログから火がつき妊婦に売れている(ワークマンカタログより)

たとえば、ノンスリップシューズ。もともとはレストランなどの厨房で働く人に向けて開発した靴だが、水まわりでも滑りにくい靴底を採用していることから妊婦に最適とユーザーブログで紹介され、一般女性に売れるようになった。

ホームセンターやフラワーショップ向けに開発したエプロンもガーデニング用として人気となり、レストラン用の焦げにくく汚れにくいエプロンも話題となった。中敷きが厚く履き心地がよいため介護現場で人気のダブルクッションキャンパスシューズも、タウンユースとして注目されている。フィールドコアでは女性用のレインウエアを開発するなど、一般女性向けに提供できる商品が徐々に揃いつつあるため、ワークマンプラスでは女性用のコーナーも用意する方針。

新業態店が成功すれば…

新業態店が成功すれば、既存店にも「ワークマンプラス」をインショップ展開していくことを考えているという。売り場中央を一般向けのワークマンプラスとし、壁面をプロ向けの展示に分けるものだ。「プロのお客様は出勤前の朝7~8時か仕事後の夕方5~7時に来店するので、昼間の時間帯は比較的空いている。そこに一般のお客様が来れば、アイドルタイムを売り上げに変えることができます」(土屋氏)。

ワークマンの土屋哲雄常務取締役(筆者撮影)

ワークマンプラスで一般客への接客・提案を磨き、それを既存店に転用することで客層の拡大も図っていきたい考えだ。「海岸近くの一部の店舗では地下足袋がサーファーに売れていると聞きます。滑らないし、足指に力が入り、岩場も歩けるかららしいです。ライダーがイージスに目をつけ、釣り人がそれに追随したように、ユーザーがワークマンの新しい使い方を発見することが多く、当社のほうが後追いでユーザーについていくことが多い。将来的にワークマンプラスでは、こうした地域のニーズにあった品揃え、提案、接客を積極的に実施し、当社のほうから発信していきたいと考えています」(土屋氏)。

現在、ワークマンの既存店1店舗あたりの平均年商は1億円。カジュアルブランド強化と同時に、本業であるプロ向けのPB商品も強化して法人営業の拡大を図り、平均年商1億5000万円への成長を目指す。2025年には1000店舗体制を計画しているが、全社売上規模も1000億円を早期に達成することは間違いないだろう。ワークマンではさらにその先を見据えて、「WORKMAN Plus」を次代の柱事業に育てようとしている。

近藤 克己 フリーライター

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こんどう かつみ / Katsumi Kondo

1966年生まれ。福島県出身。明治大学文学部史学地理学科考古学専攻卒。ロジスティクス分野の業界紙記者、IT&家電製品の月刊誌記者・編集長を経て、独立。現在、フリーライターとして活動中。得意分野は流通、物流、生活家電。

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