大学4年で起業を決意した男の予期せぬ末路 確実に稼ぐか、大当たりできなければ厳しい

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だが、期待に反して入ってくる収入はいつまでたっても微々たるものだった。最初から課金前提の有料ゲームをつくってもファンはつかない。だから無料のゲームでまずダウンロード数を上げて、広告収入で稼ぐモデルにすればうまくいく……。そう考えていた。それは安易な発想だった。

収入はない。だから仕事を増やさなければならない。だが人手は足りない。外部から資金調達してくる手もあるが、そんなことができる会社はごく稀である。したがって新しい事業やプロジェクトの開発を始めるのも難しい。

そうこうしているうちに、彼の会社は仕事がなくなってきていた。社員である友人たちも手持ち無沙汰になりつつあった。その様子を見て、彼はいっそう奮起した。

仲間への不信感

「こいつらは意識が低い。やっぱり、起業家じゃない人間はやる気がない。この会社が大きくなったら、絶対こんな奴らは雇わない――」。

在学中は、大抵のことは仲間と一緒にやることができた。企画も、イラストや音楽の発注も、開発も、すべて自分たちでできた。それが自信になっていた。しかしそれは学生の遊びに過ぎなかった。学生という身分がなくなったいま、おカネの問題もシビアに発生してくるようになった。かつての連帯感は、仲間への不信感へと変貌していた。

「世の中そんなに甘いもんじゃないよ」

あのとき、起業家から聞いた言葉を思い出した。そう、確かに世の中は甘くはない。やる気のない人間はやる気のある人間の足を引っ張るし、力のない人間は能力のある人間に支えられている。普通の会社は、いや社会は、そうやって不必要にバランスをとっている。だが、自分は違う。俺は1人でもできる! もっと俺が頑張らなければならないんだ……。

それから半年経たずに、彼は会社を畳んだ。そういうものだったのだ――。

これが途中で夢に破れるベンチャー企業のよくある一例である。

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