大学4年で起業を決意した男の予期せぬ末路 確実に稼ぐか、大当たりできなければ厳しい

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逆にどんな起業なら成功するのか。2つある。私は「キャッシュエンジン型」と「スケール型」と名付けている。

キャッシュエンジン型は、キャッシュ(日銭)を確実に稼ぎ、事業を延々と継続するための原資となるエンジン(事業継続の原動力)をあらかじめ持って起業する経営手法のことである。多くの場合は地味だが、目立たないがゆえに見逃されている。

収穫逓増型の事業モデルの「スケール型」

一方、最初に開発のための多額の資金が必要になるが、そこを乗り越えて一発当たれば、一夜にして大金持ちになることも夢ではない、収穫逓増型の事業モデルのことを「スケール型」と呼んでいる。典型例としては、「パズドラ」を当てたガンホー・オンライン・エンターテイメントや、SNSのmixiや「モンスト」を当てたミクシィなどが挙げられる。

こうした会社が成功した場合は、上場して株式を公開(IPO)するか、企業に事業を売り渡す(バイアウト)かになる。これらをあわせて「イグジット」という。イグジットとは「出口」を意味する言葉で、ベンチャー起業家やベンチャー投資家(ベンチャーキャピタル)が、投資した資金を回収する手段のことである。

バイアウトが目的ならば、ほとんどの場合、労働集約的にコツコツ資金を貯める必要はない。ヒットするサービスが一つあれば十分だ。しかし株式を公開する場合はそうはいかないことも多い。一般の株主におカネを出してもらう以上、その会社は継続して利益を出す責任がある。よくいわれるゴーイング・コンサーン、つまり永続的に会社を大きくする必要があるからだ。

もちろんスケール型の事業を大きく当てて上場した会社もかなり多くある。しかし、そんなスケール型の事業を営んでいる会社でも、安定的な成長を続けるためには、キャッシュエンジン型事業“も”自社の事業のポートフォリオの中に組み込むことが、今後の会社経営を助けてくれる大きな力になる。

『起業3年目までの教科書 はじめてのキャッシュエンジン経営』(文響社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

なぜならスケール型の事業の多くが、「プロダクトライフサイクルの罠」から逃れられないからだ。プロダクトライフサイクルとは、どんな製品やサービスにも「製品導入期」→「成長期」→「成熟期」→「衰退期」という名の売り上げの波が存在していることを示す言葉である。転じて、どんなに好調な商品であっても、いずれ終わりがくることを示す概念である。

すなわち、スケール型の事業で起業を行った会社は、最初のスケール型の事業が衰退する“前に”、次のスケール型の事業を開発し、当てておかなければ、倒産の憂き目にあうことさえあるということだ。

そうならないように、スケール型の事業を行いつつ、並行して手堅く日銭を稼ぎ続けるキャッシュエンジン型の事業を経営のポートフォリオの中に“組み込んで”おけば、大きな成長も狙いつつ、同時に会社を潰さない安定的な企業経営が可能になる。これこそが、サイバーエージェントやライブドアが行っていた、起業・独立して会社を3年で潰さないための秘訣である。

大竹 慎太郎 トライフォート代表取締役CEO

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おおたけ しんたろう / Shintaro Otake

1980年11月13日生まれ。群馬県富岡市出身。関西外国語大学外国語学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修了(経営管理修士)。2003年に新卒でサイバーエージェントに入社し、新人賞や全社MVPを獲得。SBIグループで新規事業を手掛けた後に、Speeeに経営企画の担当役員として参画。31歳でスマートフォンアプリの開発会社トライフォートを創業し、従業員の数を半年で70人に、3年で180人規模にまで育て、国内最大規模のベンチャー投資ファンドWiLの第一号投資案件になる。LINEとも資本業務提携を締結し、SBIグループのファンド等からも出資を受ける。著書に『起業3年目までの教科書』(文響社)がある。今後はAI事業など、既存の受託開発事業やゲーム事業以外にも多くの新規事業を創出する計画。

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