「潰れる銭湯と生き残る銭湯」にある明確な差 ひそかなブームでも銭湯は減り続けている

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はやっている銭湯ではコーヒー牛乳以外にも各種飲み物、オリジナルグッズなどが置かれていることが多い。季節によっては各地の名産品を売っていることも(筆者撮影)

ところが多くの銭湯はすべてを家族でやろうとして疲弊してしまう。回すことだけで手いっぱいでサービスは後回し、子どもに後を継ぎたくないと言われるようになってしまった。公衆衛生の観点での銭湯は内風呂が一般化した30年前に終わっている。違う形を模索すべきだったのに変われなかった。しかし、そこにチャンスがあると平松氏は考えている。

「遅れてきた業界だから、情報発信も含め少し新しいサービスを提供すれば話題になる。伸びしろがあるのです。好きな人が多く、取り上げてももらいやすい。新規参入がないのでIT業界のような熾烈なレッドオーシャンに比べたら、ブルーオーシャンとも言えます」

カギを握るのは家族以外への事業継承

2017年にNHKの「けさのクローズアップ」で取り上げられ、話題になった埼玉県川口市の喜楽湯を経営する中橋悠祐氏も銭湯に未来を見ている一人だ。何しろ、銭湯好きが嵩じて経営側に回ってしまったのだ。

喜楽湯自体は1950年以前から営業してきた川口市でも老舗の銭湯。川口駅、西川口駅のちょうど間くらいにあり、いまも井戸水・薪を使って湯を沸かしている(筆者撮影)

家族で代々経営するのが当然の銭湯業界では自分たちができなくなったときに他人に任せるという発想がない。そのため、やりたいという人がいても継承が難しいのが現実だが、中橋氏の場合には運営していた「東京銭湯」というメディアを通じて複数の銭湯を所有するオーナーと出会い、任された。自分のようにやりたいという外部の人間が入ってこられるような仕組みができれば、業界も変わるのではないかと経験を踏まえて中橋氏は言う。

喜楽湯の番頭2人。右の中橋悠祐氏は音楽活動を、左の湊研雄氏は芸人活動と2つの仕事を掛け持ちしている。湊氏の兄は京都で「サウナの梅湯」を再生しており、兄弟そろって銭湯好き(筆者撮影)

以前は楽器業界におり、バンドもやっているという中橋氏は銭湯を知らない世代に親近感を持ってもらおうと銭湯を舞台にイベントを開催。女性客増を狙って無料で使える化粧品などを用意する、脱衣所に漫画を置いて、来るのが楽しい場所にするなどなど、あの手この手のサービスを展開。経営を引き継いで1年ほどで入浴人員を1.5倍ほどに増やした。しかも、当初はほぼゼロだった10代~20代を含め、若い層が増えたという。外の目でサービスを再考すれば、客は増やせるのである。

銭湯業界は閉ざされた環境になりがちだと中橋氏。「長時間労働でひとつの場に縛られていると、人間、視野が狭くなります。家族経営だとなおさら閉ざされてしまう。その状態で社会の変化に対応するのは難しい。業界全体で新たな人材、考えを受け入れる体制がないとまだまだ淘汰は進むでしょうね」。

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