「潰れる銭湯と生き残る銭湯」にある明確な差 ひそかなブームでも銭湯は減り続けている
未来を見ている経営者たちは今、業界には追い風が吹いているとすら感じている。消滅しつつあるという危機意識が銭湯に郷愁を求める人を増やしている面もあるが、清水湯の川越氏はそれ以上にネットの普及がリアルを求める傾向につながっているという。
「人は仮想空間だけでは生きられない。ネットの存在が大きくなればなるほど、リアルを求める。湯で身体が温まる、そのリアルさが求められているのです」
「危機はチャンス」という経営者が生き残っていく
小杉湯の平松氏は町をひとつのホテルと見立てる宿泊施設の増加に期待する。有名なところでは谷根千にある宿「hanare」だ。宿泊施設自体にはレストランも大浴場もないが、そこは町に出て食べ、入浴してもらえばよい、そのほうが町を味わってもらえるという考えである。観光客が増え、いわゆる観光名所以外を面白がる人たちが増えれば、普通の生活のある町も観光資源になりうる。
「町にある店舗が競い合うのではなく、協働することで価値を高め、観光客、移住者を惹きつけ、活気を生むことができる。銭湯はその中心になれる存在だと思っています」(平松氏)。
立地、権利関係、相続などといった問題を考えると、今後も銭湯は減少するだろう。続けたくとも続けられないケースも多々あるに違いない。だが、その一方でそうした問題をクリアし、これまでになかった経営感覚を持ち込めたところは行き残るだろうし、逆に希少価値を持つことになるかもしれない。その意味では銭湯に限らずほかの業種にも当てはまるが、「危機はチャンス」と思える経営者が生き残っていくわけだ。
個人的には「きついこともあるけれど楽しんでやっている」という中橋氏の言葉が印象に残った。たくさん稼ぐより、自分が好きなこと、情熱を注げることをやりたいという働き方の変化もまた、銭湯の存続を左右する要素なのである。
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