現場軽視の危機対応、みずほ激震は収まらず 緊急部長会の説明も表面的。危機打開の道は遠い
行内にしらけムード
当然、危機感のみなぎる会合になると予想した行員が多かった。ところが、緊急部長会は淡々としたものだった。予定どおり1時間ほどで中継は終了。ある支店の会議室でその様子を凝視し続けていた行員たちは黙って会議室を出て行った。「俺ならば、違うことを聞くけどどう思う?」と問いかける支店長を振り向く者はいなかったという。
佐藤氏の説明は30分。冒頭で今回の問題へのお詫びがあったものの、あとは、自身が委員長を務める社内調査委員会と第三者委員会で事態を究明するという内容に終始した。「みずほの体質にメスを入れる」という言葉も発せられたが、全国の営業店が知りたかった問題の真相に話が及ぶことはなかった。
「誠実で真摯であることが(みずほの)強みである」
佐藤氏はこう発言したという。行員に対し、「だから頑張ってほしい」という叱咤激励が込められた言葉だろうが、そもそもこの日の緊急部長会の進行のやり方は、「誠実で真摯」なものだっただろうか。
そういう思いを助長させたのが頭取説明後、執行役員二人が発した質問の内容だった。
「顧客からはおしかりもあるが、励ましの言葉も頂戴している。今後、頭取はどう対処するつもりか。長期的にはどう経営していくのか」
「今後の内部管理態勢をどのようにしていくか」
これに対して、佐藤頭取はよどみなく答えたというが、深刻な事態に直面している中にあって、二つの質問はいかにも平板な問いかけだ。しかも、部長会の直後から行内を駆け巡ったのは「あれは企画部門が作った質問だった」という情報である。それが事実であれば、典型的なやらせ質問である。
11日は金曜日。翌日の休日に、全国の支店長を招集してトップが直接語りかけることもできただろう。しかし、そういう対応は取らずに、日々、取引先に接して事情説明に苦慮する営業現場の責任者すらテレビ中継の画面を眺めるだけという立場に置き、質問の機会を与えなかった。
緊急部長会は不安を募らせる営業現場に対し、平静を装うための芝居の場にすぎなかったと判断せざるをえなくなる。