「すべては佐川と理財局」で財務省は本命温存 「わかれば苦労しない」と居直る麻生財務相

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そうした中、国会は5日、衆参で委員会審議を続行し、衆院財務金融委員会では野党側が繰り返し麻生氏に財務相辞任を迫ったが、麻生氏は「(再発防止などを)全力で進めることで大臣の職責を果たしたい」と改めて辞任を否定した。さらに野党側が財務省の文書改ざんや森友学園との交渉記録の廃棄について、首相の「関係していたら国会議員も辞任する」との国会答弁が原因と追及したが、麻生氏は「一連の調査の中では、首相の発言をきっかけとしてそういうことになったという事実は認められない」と否定した。

安倍外交が絡む審議日程で会期中幅延長論も

森友問題は財務省調査結果公表と関係者処分で一定の区切りがついたとする与党は、自民、公明両党の幹事長・国対委員長が5日午前に会談し、カジノ準備法案などの今国会成立を期すため、参院審議の状況を見極めて、会期延長を検討することを確認した。働き方改革関連法案は同日に参院での実質審議がスタートしたが、カジノ法案の審議は遅れており、当初会期内の成立が困難視されるからだ。首相サイドは国会での疑惑追及への不安から小幅延長を期待しているが、参院側は来夏の参院選への悪影響も考慮して「できるだけ審議時間を確保して、正常な形で法案を処理したい」(参院自民国対)と7月中旬までの中幅延長を主張しており、調整はなお時間がかかりそうだ。

国会最終盤の法案審議には安倍外交の日程も影響する。首相は7日に訪米してドナルド・トランプ米国大統領とホワイトハウスで会談する。12日の開催が確定したシンガポールでの米朝首脳会談に向けた事前調整が目的だ。首相はそのままカナダ入りし、同国で8、9両日に開催される先進国首脳会議(G7サミット)に出席する。さらに、12日の米朝首脳会談後にその結果をめぐって改めて日米首脳会談を開催しようとの動きもあり、首相の出席が必要な衆参本会議や予算委集中審議などの審議日程は極めて窮屈な状態となるからだ。

その一方で、自民党内からは「もり・かけ疑惑」について「首相が国民を納得させる説明が必要で、それをおろそかにするようなら外交でも渡り合えなくなる」(鴨下一郎元環境相)との厳しい指摘も出る。首相は9月の自民党総裁選での3選に向けて、今国会閉幕直後に出馬表明したい考えとされるだけに、これからの約1カ月間、超過密日程の中で内外の課題処理に神経をすり減らす厳しい政局運営を強いられることになる。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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