「すべては佐川と理財局」で財務省は本命温存 「わかれば苦労しない」と居直る麻生財務相

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一方、政府は処分を踏まえて新たな財務省幹部人事にも着手した。これまでの調整では財務事務次官に星野次彦主税局長(昭和58年〈1983年〉入省)、国税庁長官に飯塚厚関税局長(同)がそれぞれ昇格する。また、主税局長の後任は藤井健志国税庁次長(同60年〈1985年〉入省)とされ、岡本薫明主計局長(同58年入省)、太田充理財局長(同)、矢野康治官房長(同60年入省)はいずれも留任の方向だ。

財務省では3月に佐川氏(同57年〈1982年〉入省)が国税庁長官を、続いて4月にはセクハラ問題で福田淳一事務次官(同)がそれぞれ辞任したことで、2トップ不在という異常事態が続いてきた。注目されたのは次期事務次官の本命とされた岡本氏や、佐川氏の後任として国会答弁を一手に引き受けてきた太田氏の処遇だったが、岡本氏は改ざん当時の国会答弁を統括する官房長だったことから監督責任を問われて次官昇格が見送られ、太田氏は国会答弁優先を理由とした留任となる。

今回の幹部人事は、財務省本流を歩んできた岡本、太田両氏を温存する「中継ぎ人事」の色彩が濃く、財務省は来年の人事で岡本事務次官・太田主計局長という本来の体制に戻す腹積もりとされる。ただ、2019年10月からの消費税10%実施など財政再建をめぐる重要課題が山積するのに、政権内部では今回の不祥事を受けての財務省解体論すらささやかれており、今後は「人事どころか財務省の存在そのものが問われる」という厳しい事態も予想される。

改ざん理由が「分かれば苦労しない」と麻生氏

森友問題での決裁文書改ざんが発覚したのは3月初旬。財務省は約3カ月間の省内調査で改ざんに至る詳細な経緯を全51ページの報告書にまとめた。その結果、これまでこだわってきた「文書書き換え」との文言を初めて「文書改ざん」に改め、「改ざんは佐川局長の国会答弁との齟齬による国会審議の紛糾をおそれた理財局の一部で行われた」などと結論づけた。

その一方で、国有地売却交渉に絡んで首相夫人付きの政府職員が財務省に問い合わせた事実などを踏まえた昭恵夫人への「配慮」や「忖度」は否定し、佐川氏が「虚偽答弁」に突っ走った理由など肝心な点は明確にしなかった。改ざん理由など残された疑問について、麻生財務相は記者会見で「それが分かれば苦労しない」と言い放ったが、トップが身内の調査の甘さと限界を認めて開き直った印象が強く、「国民の納得が得られるはずはない」(自民長老)との批判が広がる。

このため、麻生氏の続投についても「5年にわたって大臣を務めている麻生財務相の政治責任は明確だ。お辞めになったほうが晩節を汚さないことになる」(枝野幸男立憲民主党代表)、「(麻生氏が)カネで済ませようというのは間違っている。新しい体制で顔を洗って出直せ」(辻元清美同国対委員長)などと野党側の辞任要求は強まるばかりだ。

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