「すべては佐川と理財局」で財務省は本命温存 「わかれば苦労しない」と居直る麻生財務相

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麻生財務相は5日の衆院財務金融委員会でも辞任する考えを否定、佐川氏の任命についても「適材適所だった」と述べた(写真:共同通信)

森友学園問題での公文書改ざんなどについて、5月31日の大阪地検による不起訴処分を受けて、財務省が4日、省内調査報告と佐川宣寿前国税庁長官ら関係者の処分を発表した。昨春以来、安倍政権を揺さぶり続けた「森友疑惑」は、ようやく第1幕に緞帳が降りた。

最高責任者の麻生太郎副総理兼財務相は、閣僚給与1年分の返納を「けじめ」として、再発防止策策定を理由に続投を表明した。省内調査では「すべては佐川氏と理財局の主導」として「財務省全体の組織的関与」を否定した。安倍晋三首相らが「問題の本質」としてきた国有地売却での不透明な大幅値引きについては、「調査の対象外」と究明せずじまい。多くの疑惑を積み残したままの「財務省流の幕引き」(自民幹部)には虚しさが際立った。

政府・自民党は「これにて一件落着」とばかりに、20日の会期末をにらんで働き方改革関連法案やカジノ(IR)準備法案など重要法案の審議促進に全力を挙げる。しかし、立憲民主党など野党5党は「幕引きは許されない」と猛反発し、「万死に値する」と麻生氏への辞任要求を軸に首相の政治責任を徹底追及する構えだ。併せて「国会での疑惑解明はこれから」と公文書改ざんの首謀者として処分を受けた佐川氏や、国有地取引での"口利き疑惑"が指摘される首相夫人・昭恵氏の証人喚問も強く主張している。

ただ、野党5党の抵抗戦術にも手詰まり感が漂い始めており、麻生氏の居座りへの与党内の批判も沈静化しつつあるため、永田町では「国会最終盤の攻防も政府与党の逃げ切り勝ちになる」との声も出始めている。

改ざんの罰金は麻生氏170万、佐川氏500万

財務省は4日午後、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざん問題での省内調査報告と関係者の処分を発表した。当時、理財局長だった佐川氏が「改ざんを事実上指示した」と断定して、3カ月の停職処分相当とした。停職は懲戒処分としては2番目に重く、すでに辞職している佐川氏に支給される約5000万円の退職金は、約500万円の減額となる。また理財局の中村稔総務課長を停職1カ月の懲戒処分、担当課長を減給20%・3カ月、担当室長を減給20%・2カ月とするなど20人の処分も決めた。

これを踏まえて麻生財務相は4日の記者会見で「深くお詫び申し上げる」と謝罪し、閣僚給与1年分(170万円)を自主返納する考えを明らかにした。ただ、自らの辞任については「考えていない」と否定。首相も記者団に「二度とこうしたことを起こさないように、公文書の在り方を見直し、再発防止策を講じる」としたうえで、「(再発防止の)先頭に立って責任を果たしてもらいたい」と改めて麻生氏を続投させる方針を表明した。

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