核融合炉を14歳で作った天才の親がしたこと 5歳の誕生日プレゼントはクレーンの操縦
たいてい偉人は幼少期からトンデモエピソードが絶えないものだがテイラー少年も同様である。テイラーは偏執的に穴掘りを楽しんでおり、すぐに穴掘りというより”建設工事”と呼べる域へと到達してしまう。5歳の誕生日には本物のクレーンが欲しいんだと泣き叫び、普通の親ならこやつめハハハと却下するところだろうがテイラー少年の父親ケネスはなんと建設会社を経営している友人に声をかけ、6トンクラスのクレーンを家に持ってきて好きに操縦させたという。
その時点で「親もすげえな」と感嘆するほかないが、そうした方針が結果的にはテイラーにとっては良いように左右した。なぜなら彼はその後、どれだけ寛容であったとしても普通の親ならまず許可しないであろう領域にズブズブ入り込んでいくのだから。「ケネスによれば、ふたりがしたかったこととは、『子どもたちが自分らしさに気づけるようにすること、そして彼らがその自分らしさを伸ばせるよう、できるかぎりのことをすること』だったという」。
ついに核物理学に興味を持つ
テイラー少年がロケット制作などを経て核物理学に興味を持つのは10歳の誕生日のことだ。テイラー少年は誕生日に、彼と同じような少年が裏庭の小屋で増殖炉を作ろうとしてあやうく死にかけた実話ノンフィクション『The Radioactive Boy Scout』を買ってもらい、個人でもハンズオン型の原子核物理学に挑戦できることを知ってしまう。そこからあとはもう一直線だ。
ラジウムを精製して、放射能をさらに高くして、その放射線を安定な元素に当てる実験をする。イーベイで放射線関係のものを買い漁る、放射線関連機器メーカであるスペクトラム・テクニクスに出かけていって放射線同位体ジェネレータを手に入れる、鉱石からウランを抽出する、と一歩間違えれば大惨事になりかねない領域へとどんどん踏み込んでいく。その点、彼が凄いのはそのへんの安全面についてはめっぽう気を使っていた点だ。フェイスマスク、グローブ、防毒マスクをつけてありとあらゆる計測機器も準備している。ただ、親の緊張は相当なものだった。
何しろロケットをつくるだけならまだ何かあった時は爆発なりなんなりでヤバさが一瞬で伝わるが、放射線が漏れ出してしまったら知らぬ間に致命傷になりかねない。しかも両親は科学者ではない。どれだけ息子を信頼しているとはいっても、彼がやっていることがどれぐらい危険なのか、大丈夫だ、問題ないという説明を受けてもわからないのである。子どもを信頼してただ任せるというのは、立派なようで時に都合のいい言葉だ。その点、テイラー少年の両親は凄かった。
ただ息子を危険なものから引き離すわけではなく、放任したわけでもなく、放射線医薬品を供給する会社を経営する友人にテイラーのメンターを任せたのだ。”「安全に」好きにさせるためにはどうしたらいいのか”と考えた結果だったのだろう。
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