21世紀の太宰治、その言葉はSNSで「拡散」する

熱狂的な信望者とアンチを生み出した作家

『太宰治のお伽草紙』。木村綾子/2013年/源。痛快なパロディー小説『お伽草紙』のガイド本。 太宰の甥である津島慶三と著者の対談も収録
2000年代後半から現在にいたるまで、太宰治がまた広く親しまれている。2009年から始まった「太宰治検定」や、芸人、作家の又吉直樹さんが主宰するイベント「太宰治ナイト」。マンガ『文豪ストレイドッグス』(作・朝霧カフカ、作画・春河35)やスマホゲーム「文豪とアルケミスト」では、太宰治はじめ「文豪」たちがキャラクター化されてもいる。
かつて破滅的な無頼派として熱狂的な信奉者とアンチを生み出した太宰治は、いまどのようなかたちで受け入れられているのだろうか。太宰リヴァイヴァルの立役者のひとり、作家の木村綾子さんとともに探求した。

現在の太宰リヴァイヴァルのきっかけには、10年前の没後60年(2008年)、生誕100年(2009年)というタイミングが関わっている。実際、2009年には、太宰治生誕100年という売り文句とともに映画『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』(根岸吉太郎監督)が、翌年には、やはり太宰生誕100周年を記念して『人間失格』(荒戸源次郎監督)、『パンドラの匣』(富永昌敬監督)が、それぞれ公開されるなどの盛り上がりを見せた。

そんななか、当時、タレント活動をおこないながら大学院で太宰治の研究をしていた木村綾子さんも、『いまさら入門太宰治』(講談社+α文庫)という太宰入門書の執筆をはじめ、太宰リヴァイヴァルに貢献する。なかでも、木村さんが企画運営に携わる「太宰治検定」は大事な動きである。

幅広いファンが参加する、「太宰治検定」

2009年に始まった「太宰治検定」は、区画整理で失われていく青森県五所川原(太宰の故郷)を再興する意味合いがあり、親族である実行委員長の津島克正さんおよび津島家の協力のもと進められた。

本記事は『東京人』2018年7月号(6月1日発売)より一部を転載しています(書影をクリックするとアマゾンのページにジャンプします

そして「太宰治検定」は、太宰に関する正確な知識を得るための窓口として、多くの太宰ファンを巻き込むこととなる。これまでに『津軽』『富嶽百景』『お伽草紙』、太宰の人となりなどを題材にした試験がおこなわれており、毎年、幅広い年齢層のファンが『太宰治検定公式テキスト』を片手に検定会場をおとずれた。木村さんは、「太宰治検定」について次のように述べる。

「太宰治検定を企画するなかで、わたしも五所川原に行きました。太宰が見た景観がなくなってしまうと思うと悲しかったです。また、克正さんの紹介で長女の津島園子さんにお会いすることもできたし、ご親族のかたから直接太宰の話を聞くこともできました。だから、検定はライフワークにしたいという思いで関わっています」

「太宰治検定」は、新しい太宰ファンを獲得するとともに、従来の太宰ファンを振り向かせる好企画だった。そしてそれは、運営側の木村さんにとっても大事なものになったようだ。

次ページ”暗い太宰”から、”明るい太宰”に
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