原油価格は、思ったほど大きく下がらない

サウジとロシアは減産緩和に動くのか?

イランはOPEC第3位の産油国で、現在の生産量は日量380万バレル前後である。制裁発動で輸出に深刻な影響が出れば、日量100万バレル程度の減産になるとの試算があり、これによって原油高に拍車がかかるとの見方は根強い。

また、これまで原油高を背景に産油量を伸ばしてきた米国にも影響が出る可能性がある。最新週の米国内の石油掘削リグ稼働数は859基と、722基だった前年同時を大きく上回っている。米国内の掘削業者は原油高でシェールオイルを中心に産油量を増やしているが、これも高い原油価格があってこそ可能である。

原油高は米国にプラス

しかし、稼働リグの半分以上は、テキサス州西部とニューメキシコ州東部のパーミアン地域であり、いまはこの地域だけが活発に稼働している状況にある。テキサス州西部からニューメキシコ州東部にかけて広がるパーミアン盆地でのリグ稼動数は全体の半分以上を占めており、実際にはかなり偏りがある。

この地域でさらにリグの稼働を可能にするためには、1バレル=65ドル以上の原油価格が持続することが必要である。この点から、WTI原油が60ドルを下回るようだと、いずれ米国内の産油量は減少し、原油価格の下値を支えることになるだろう。

とはいえ、OPEC加盟国・非加盟国が減産を見直せば、原油価格は下落する可能性が高い。実際、2014年夏場以降の原油価格の下落の直接的な原因は、OPECの増産だった。原油価格の水準を回復させるために始めた減産を、今の時点で修正すれば、これまでの努力が水泡に帰す。過去と同じ愚行を繰り返すのか、サウジ・ロシアを中心とした産油国の知性が試されていると言ってよいだろう。

一方で、これから北半球はガソリン需要期に入る。すでに5月28日の米メモリアルデーを境に、米国では名実ともにガソリン需要期に入った。この時期から石油需給がひっ迫し、原油相場が上昇していくのが通常の動きである。例年通りの動きになれば、夏場から秋口にかけてWTI原油は80ドルを目指すだろう。

ほとんど指摘されていないが、米国内の石油需要は堅調であり、需要に対する石油製品の在庫量は過去10年でもっとも低水準にある。これ自体も原油相場の下支え要因といえる。今回、OPECが産油政策の見直しを検討し始めた背景には、トランプ大統領が4月にツイッターで「原油価格は高すぎる」と発言したことも理由の一つとされている。

しかし、世界最大の産油国になった米国にとって、原油価格の下落は自国の石油産業の停滞も意味する。原油高によるガソリン価格の上昇は個人消費への影響が懸念されるものの、原油相場が高い方が、米国にとってもメリットがあることは明白である。トランプ大統領の発言を真に受けてはいけない。いまは減産見直し機運で原油相場は不安定だが、いずれ基調を回復させ、再び高値を目指すことになるのではないか。

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