ファッションの丸井、「証券事業」参入の思惑 今夏、「つみたてNISA」対象の投資信託を販売

拡大
縮小

そこで、小売事業では現在、事業構造の転換を打ち出している。「モノからコトへ」という消費トレンドの変化を意識し、商品が売れたときに売り上げと仕入れを計上する従来型百貨店方式(消化仕入れ)の売り場面積を減らし、テナントからの賃料収入を主とする定期賃貸借の売り場面積を広げている。

特に、これまでの柱だったアパレルの比率を減らし、需要が底堅い飲食の比率を拡大。サービス分野も拡張しており、この4月には、新宿マルイ本館にアップルの新しいストア「Apple新宿」をテナントとして誘致した。

競合が少なくない証券事業

金融事業では、商業施設や映画制作会社などコンテンツ系企業との連携を強め、提携カードを増やしている。社内研修を通じて、社員の接客力向上にも注力。それらの結果、ショッピングクレジットの取扱高はここ数年2ケタ増を続けている。

事業構造転換の効果が発現し、丸井の業績は目下好調だ。今2019年3月期について、売上高を示す売上収益が2490億円(前期比4.2%増)、営業利益が400億円(同13.5%増)と、連続で増収増益になると見込む。

ただ、継続して成長を続けるためには課題もある。クレジットカードの新規会員は年間80万人以上を獲得する計画を掲げるが、前2018年3月期まで2年連続で未達に終わっている。

強化中のEC(ネット通販)事業も2018年3月期の売上高が230億円と全体の10%以下にとどまっている。物流センターの機能拡張などにより2021年3月期に330億円に引き上げる算段だが、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」など新勢力が勢いづく中、順調に伸ばしていけるかは未知数だ。

 今回参入を表明した証券事業についても、競合は多い。楽天傘下の楽天証券は、楽天カードを利用して投資信託の積立資金を支払えるサービスを確立している(ただ、純粋なクレジット払いではなく、カードポイントがつかない)。KDDIやコミュニケーションアプリのLINEも証券ビジネスの準備を進めている。丸井は新分野で、異業種の独自性をどこまで追求することができるか。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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