挑み続けた44歳「元格闘家」の明るすぎる転身

引退後に強い輝きを放ったメンタリティ

この日のファイトネスの光景を見ると、現役時代のキャリアとは打って変わって、総合格闘家のセカンドキャリアとして、理想的な人生を歩んでいるように感じる。だが、ここまで歩んできた大山の引退後の道のりもまた、決して平坦なものではなかった。大山は、引退した当時のことを、懐かしむようにこう語る。

「現役の頃は、引退した後に何をしようかなんて一切考えていなかったんです。なんとかなるんだろうなって思ってました。それに、現役の時は周りの人たちも良いことを言ってくれるんです。“助けてあげるから何でも言ってこい”ってね。人脈もそれなりにはあったので、きっと誰かが手を差し伸べてくれるんだろうなっていう甘い考えもありました。甘えていた自分が悪いんですけどね(笑)」

人生のすべてを格闘技に注ぎ、自らの命を削って生きてきた。プロの格闘家として、世界の名だたる強豪と戦ってきたという自負があった。だが、第一線で戦うことができなくなった時、今後どうやって生きていくのかという現実に対して、40歳の時の大山は答えを持っていなかったのだった。

誰かが手を差し伸べてくれるだろうという考えが甘かったと気づくのに、そう時間はかからなかった。

引退後、初めて、“自分には何もないんだ”と悟るとともに、周囲は真っ暗で八方塞がりのように感じ、しばらくの間、途方に暮れた。

“このままでは溺れてしまう”、そう感じた大山は、藁をもつかむ思いで、携帯電話を手に取った。

たどり着いたヒント

引退後の大山は、何も持っていなかったが、時間だけはたくさんあった。そこで、携帯電話に登録されている人に片っ端から連絡をとり、まずはたくさんの人の話を聞くことにした。格闘技関係者はもちろんのこと、経営者、ビジネスパーソン、医療関係者、教育者など、ありとあらゆる業種の人と会って、耳を傾けた。そうこうしているうちに、ある情報に出会った。

「厚生労働省が、企業に対して、ストレスチェックを義務付けるらしい」

ストレスチェックとは、ストレスに関する質問票に労働者が記入し、それを集計・分析することで自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査のことだ。「労働安全衛生法」が改正され、2015年12月から、労働者が50人以上いる事業所では、毎年1回、この検査を労働者に対して実施することが義務付けられることになった。

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