普通の日本人が知らない「貧困」の深刻な実態

親→子→孫へと連鎖し、高齢者にも広がる

シングルマザーに対して冷たい企業が多く、子どもがいても正規社員に採用されている人の割合は4割を超えてはいるが、57%が非正規雇用のままだ。保育園や学校などの煩雑な用事にとらわれ、正規社員のようなフルタイムの仕事はなかなかできない。結局のところ、正規社員と非正規社員の賃金の差が、母子家庭の貧困という形になって表れていると言っていいだろう。

母親がどんなに優秀であっても、働く機会を平等に与えない。それが現在の日本企業の問題と言っていい。

➁公的支援の怠慢

OECDの発表によると、GDPに占める教育機関への公的支援の割合は、33カ国中日本がワースト2位となっている。貧困にあえぐ子どもに対する政府支援が十分でないことを物語る数字だ。最後のセーフティネットとも言われる「生活保護制度」も、過剰な財政赤字のせいで圧迫され、簡単には受け入れられない現実がある。

母子世帯の生活保護制度による「生活扶助費」は、家族構成や地域によっても異なるが月額13万~14万円程度。貧困層のひとり親世帯の所得は年間122万円、月額10万円ちょっとよりもずっと多い。だったら、貧困層に属するひとり親世帯は全員が生活保護を受けたほうがいいと考えがちだが、そう簡単には生活保護が受けられない仕組みになっている。

子ども食堂といったその場しのぎの方法では、いまや抜本的な解決にはなっていない。非正規社員の低所得にあえぐ母子家庭に対して、いますぐ公的な支援が必要になると考えていいだろう。

母子世帯は、約123万8000世帯(「ひとり親家庭等の現状について」より)。そのうちの半数が貧困層とすれば62万世帯。母と子で少なくとも120万人が貧困と戦っている。

親から子へ、子から孫へ

③貧困の連鎖

貧困問題の深刻さは、親から子へ、子から孫へという具合に世代を超えて連鎖していく傾向があることだ。「貧困の連鎖」と呼ばれるものだが、親の経済的困窮が子どもの教育環境や進学状況に大きな影響を及ぼすため、貧困は連鎖しやすい。

大学既卒者の割合が50%を超え大卒が標準化した現在、大学に行けない世代が生涯賃金などで大きな遅れを取り、結果的に貧困の連鎖につながっている。むろん、業界や企業規模による賃金格差も大きいが、日本は依然として学歴偏重社会と言っていい。

こうした現実をきちんと把握して対策をとる必要がある。大学進学のために多額の借金を抱えてしまう現在の奨学金制度では、抜本的な改革にはならない。むしろ大学卒業後の行動範囲を狭めてしまう。

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