アクトコール、「松下村塾のようにしたい」 平井俊広社長にロングインタビュー

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小林:2007年の11月からスタートされた 不動産管理会社向けアウトソーシングサービス「アクシスライン24」のことですね。なぜ、賃貸不動産の管理に目をつけたのでしょうか?

「アクシスライン24」の概要(図:アクトコール Webサイトより)

平井:賃貸不動産市場は1300万世帯にも及ぶ大きな市場ですが、そのうちの40%は管理会社が介在していない物件です。そして、管理会社の手中にある60%については、2強とその他で分け合っている構図になっています。しかも、2強が獲得しているシェアは合計でも10%に満たないのが実情。ほとんどを中小・零細事業者、つまりは「街の不動産屋さん」が管理しているわけで、再編整備が非常に遅れている世界だったのです。だから、僕は大きなチャンスが潜んでいると確信しました。

小林:つまり、賃貸物件の管理は旧態依然とした世界で、大いに開拓の余地があったということですね。

平井:はい。そこで戦って勝っていこうと考えた背景には、高校進学時の原体験があります。僕は中学の先生に反対されて、第一志望の高校を受験させてもらえなかったんです。でも、試験が終わってみると、僕よりも成績が悪かった生徒が何十人もその高校に受かっていた。

当初は先生のことを非常に恨みました。でも、3年後には逆にその先生に対し、感謝の念を抱いていましたね。もしも、僕が第一志望の高校に入っていたら、きっと「下の中」の成績に甘んじていたはずです。ところが、僕は進学先の私学の男子校で、3年間を通じて「上の上」を維持できました。「上の上」で居続けるという環境に身を置いたことで、自分が大きく変わったと思っているんです。

この原体験から、僕は無理をして一流になろうとは思わず、二流のポジションを維持しながら三流を相手に戦って勝っていくことの意味を体感しており、そこで、この賃貸の世界で戦っていこうと考えたのです。

小林:なるほど。まさに「鶏口となるも牛後となるなかれ」ですね。

M&Aの9割は上手くいかないと割り切っている

小林:さて、続いて、2013年3月に決済ソリューション事業を展開するインサイトを子会社化したのは、どういった理由からなのでしょうか?

平井:先程、賃貸不動産の40%は管理会社が介在していない物件だと説明しましたが、要するにそれらは家主が自主管理を行っているわけです。そういった物件と当社がつながっていくためには、決済機能が必要だったのです。

そこで、インサイトの現場責任者に会ってみたところ、「どうか社員を守ってください!」と懇願してきたので、その言葉を信じてM&Aで傘下に収めることにしました。

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