アクトコール、「松下村塾のようにしたい」 平井俊広社長にロングインタビュー

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平井:儲かるとか儲からないとかは二の次で、人に対する思いがどれだけあるのということが僕の判断基準なのです。そもそも、僕は「儲かりますよ!」といううたい文句で持ち込まれる案件については聞く耳を持ちません。「面白いですよ!」なら、話を聞きます。

だって、「面白かったら許す」というノリが関西人にはあるでしょ(笑)。ともかく、当社のルート営業とのシナジーも得られたことから、インサイトは当社の傘下に入って3年目に黒字転換を果たしましたね。

小林:その後も次々と様々な会社をM&Aで獲得していますね。

やりたいと願い出る人にやらせてみる

平井:実は、基本的に僕はM&Aに関しては後ろ向きのスタンスです。なぜなら、M&Aの9割は上手くいかないと思っているからです。数字だけで判断して買収を決めても、なかなか期待通りの結果は出ません。やはり、大切なのは人ですよ。

正直に言えば、インサイト以外のM&Aについては100%満足できる結果とはなっていないというのが僕の感想です。ただ、新規事業に関しては、担当者に「ぜひともやりたい!」という気概があれば、可能な限り採算を度外視して挑戦させてやりたい。

その一例に挙げられるのが、定額制ライブ行き放題サービス「sonar-U」の運営ですね。その担当者は28歳で当社に入ったのですが、それまでバンド活動しかやっておらず、社会人経験がゼロでした。そんな履歴書の人間を採用する会社なんてまずありませんから、当社で働いてもらうことにしたわけです(笑)。

すると、彼は恩義を感じて大いに頑張ってくれて、1年後にはPCを使いこなせるようになり、6年後には営業部長に昇進したのです。そのうえで、「sonar-U」を運営してミュージシャンたちの生活を助けたいと私に訴えかけてきました。

小林:それで、「やってみなはれ」という話になったわけですか?

「オレがクビを縦に振るような一言を目の前で言え!」と最終通告し、発破をかけたという平井社長(写真:Signifiant Style)

平井:いいえ。企画書を何回突っ返しても諦めないので、「もう、ええ加減にせいや。じゃあ、オレがクビを縦に振るような一言を目の前で言え!」と最終通告をしました。

すると、「社長、音楽に国境はありません」と返してきたので、僕も「おう、そうやなぁ……」と言うしかなく、「オレの権限でどうにかするから、とにかくオマエが諦めるまでやれ!」ということになったわけです。

ただし、だからといって野放しではないですよ。「有料会員が100万人を突破しているのはクックパッドとニコニコ動画しかない。あちらは数百円でこちらは1600円だけど、わかっているよな? やる以上は100万人獲得だ!」と彼には言い聞かせていますから(笑)。

小林:なるほど(笑)。さらに、不動産の開発事業も手掛けていますね。

平井:不動産開発については、当社の体力でこなせる範囲内の規模にとどめています。「アクト安心ライフ24」や「アクシスライン24」といったストック型のビジネスで着実にバントヒットを重ねていくことを基本としつつ、開発でホームランも狙うというスタンスです。

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