人生100年、ニッポンは「ジレンマ大国」になる 日本の若者が「ライフ・シフト」著者を直撃

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「私の新しく出版される本は、じつはそのことについて書いています」と言うグラットン氏。AIやロボットが発達したからといって、すべての人間の仕事を奪うわけではないと指摘する。

「私が日本政府に伝えたのは、とくに製造業の労働者についてです。彼らはロボットのようであればそれで良かった。でも、その働き方は変えていかなくてはなりません。組み立てラインの仕事は、ロボットのほうがよりたくさん仕事ができるでしょう。では人間は何をするか。AIやロボットではできないようなこと――つまり創造的かつ革新的であること、思慮深く、楽しく、そして発奮し人間本来の力を発揮する必要があるのです」

AIについて自身の経験を話してくれたのは、大学改革やAIの社会応用に携わる田中和哉さんだ。社会人になって再び学ぶにしても、大学側がそれに対応できていないという。

「現場でAIが入っても、たとえばアナウンサースクールは今のAIの動向を踏まえたカリキュラムになっていない。リカレント教育の一例であるMBAなどの大学教育もそう。『それはAIでもできる』という話をすると、では大学は何をすればいいのかって……。教育の専門家が、専門外の技術の動向を学ばないといけない。それをいま研究しているんです」

グラットン氏もまた「教育機関は変化が苦手」と、田中さんの指摘に大いに頷いた。少なくともこれからの大学は、若い世代のみならず生涯教育を充実すべきこと、さらにオンラインで学べるようにしていかなければならないと言う。

これは「意識高い系」の議論ではない

さて、収録現場は時間が経つにつれて挙手する人が続出、ほとんど「リンダ・グラットンの人生相談」の場と化していた。話題は日本の家族関係、社会保障制度、地方活性化、あるいはポスト伝統主義の時代の生き方、国家への信頼など多岐にわたった。

『LIFE SHIFT――100年時代の人生戦略』は、30万部を超えるベストセラーになっている(画像をクリックするとアマゾンのページにジャンプします)

最後に感想を促された田中さんが言う。

「この社会を変えていくためには、やっぱりどうやって人を巻き込んでいくかということだと思うんです。ここにいる私たちだけが特殊なんじゃない。生き方が多様になるんだから、みんなが特殊になる。国や社会を変えていくことは、みんなでやらなければいけないこと」

当事者意識を持つことの重要性は当然だが、そこから、それぞれの人生にどんな新たな展開が見えてくるのか?

番組では、グラットン氏の言葉からの単なる学びに留まらず、その精神を汲み取った上で、この国らしい発展のさせ方はありうるかなど、あらためて「ニッポンのジレンマ」を考える契機となるやり取りが展開する。

人生100年時代の到来。「意識高い系」の議論と揶揄している時代はとうに終わり、世代を超えて、個人それぞれが自らの生き方、考え方を模索する時代が到来している。現実に向き合おうとする勇気ある現代の若者たちの姿、そしてグラットン氏の真摯な言葉から何を得るべきか?

番組で、さらにリアルな予定調和なき議論の行方をご覧いただきたい。

笹 幸恵 フリーライター

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ささ ゆきえ / Yukie Sasa

流通専門誌の編集記者を経てフリーライターに。ビジネス関係の取材・執筆の傍ら、戦史を中心とした近現代史の取材をライフワークとしている。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『白紙召集――軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)などがある。全国ソロモン会常任理事。

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