さて、話題を今シーズンのプロ野球に戻しましょう。
この2週間で私が注目したのは、なんといっても中日ドラゴンズ・松坂大輔投手の12年(4241日ぶり)の日本復帰後初勝利です!
私自身、現役時代に対戦した投手の中で球界ナンバーワンだった彼が、全盛期にアメリカに渡り、メジャーリーグで活躍する姿は容易に想像できましたし、事実、メジャーでの投球をテレビで見るたびに、改めてすごい投手だったんだなと何度も思いました。
彼のストレートは当時、球界最速クラスでしたが、私がいちばんビックリしたのは球速よりもスライダーの曲がり方! 並の投手はいわば“フツーにスライダー”。バッターボックスに立っていると『あ、曲がってる』くらいの感じなんですが、松坂投手のソレは“曲がりながらスピードがアップしてくる”。140km/hくらいで球速が落ちずに曲がってくるから、そりゃ〜厄介ですよ(笑)。
腕の振りもストレートとスライダーの見分けがつかないので、低めのスライダーにはめちゃくちゃ空振りさせられました。これ、私だけではなく、すべての選手がそうだったといえば、松坂投手のすごさをご理解いただけるでしょうか。
私が近鉄在籍中も、松坂投手と対戦する際のゲーム前ミーティングでは、当時のバッティングコーチから「27球で終わってもいいから、ストライクゾーンに見えたらどんどん振っていけ」と指示されたものです。あの“いてまえ打線”でさえも、ですよ。
試練を乗り越えた松坂の投球から感じたこと
このような投手でしたが、アメリカでの右肘手術や、日本での肩の手術、年齢による衰え等でピッチング・スタイルも変わり、どちらかというと力でねじ伏せる投球よりも、緩急をつけたり(奥行き方向)、ボールを動かして打たせる(左右方向)ような、技巧派になったように思えます。というより、ならざるをえなかったというべきでしょうか。しかし、このような投球スタイルの中にも、往年時代を思わせるような力強いストレートも時折見られるので、私的にはこういう投球が出たらとてもうれしい気持ちになってしまいます。
プロ野球選手にとって、“故障”“手術”というのはある意味、職業病とも言えるくらいのもの。もちろん、プロ野球選手だって人間ですから、故障も手術も痛いし怖いしイヤです。が、スポーツというものを職業にしている以上、密接に関わり、また真摯に向き合わなければいけない試練でもあります。特に、肩の手術は治りにくいと言われていて、イヤなものなんですよね。
だからこそ、松坂投手がこれらを乗り越え、勝利を12年ぶりに味わったということが、自分のことのようにうれしかった。さらに今、ドラゴンズに移籍して以降、一軍で投球しているときの表情がとても良い! のびのびと野球を楽しんで投げているように見受けられるんです。それもうれしい。今後もファンの皆様と同様、一球でも一試合でも多く投球する姿を見られるように期待しています。
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