「会議で影が薄い人」は役割をわかっていない 「即反応」が苦手な人にこそできることもある

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筆者が尊敬する上司から教えられた教訓のひとつに、「苦手分野克服に取り組むなら好調時に」というものがあります。マネジメント経験を積めば積むほど、共感が増してきた言葉です。

どんな人にも、得意・強みがあり、苦手なことや課題もあります。そして、苦手を克服するよりずっと、強みを伸ばすことのほうが取り組みやすいのが常です。

苦手克服に意識を傾けていると自己嫌悪にも陥りやすく、せっかくの強みが伸び悩んでしまうこともあります。よく、「こういうところがダメだ」と指摘し、その克服ばかりを求める上司がいますが、それこそ部下育成が苦手な人だと思いますね。日々、課題に向かわせるより、その人の強みが発揮され、「仕事が面白い」と感じている好調なタイミングに、小さな苦手を克服する努力をさせる方がよほど成果が出る、と思います。だから、あなたが「絶好調」でないのなら、「調子がいいときに挑戦しよう」くらいのスタンスでいればいいのです。

苦手なことをもっと苦手に感じるバッドスパイラルに陥るのはもったいない! もし、あなたの上司がやんやと指摘ばかりするタイプなのであれば、具体的な対応策を一緒に考えてもらえるチャンス、とでも考えておけばいいのでは、と思います。

大事なのは「即反応」だけではない

そのうえで、ということになりますが、「苦手と得意は表裏一体」と考え、さらに、もっと「得意を生かす」ことを指向してみてはどうでしょうか。

ご相談文を拝見していると、あなたは発言のスピードにこだわっています。即座に反論したり、自分の意見を述べたりする人を見ると焦ってしまうのでしょう。でも、会議体では、「即反応する」ことばかりが求められているとは限りません。

あなたは即時に反応するのは苦手かもしれませんが、「人の意見を理解し、受け止める」のが得意な人です。これはあなたの優れた持ち味だと思います。

筆者は過去、自分自身が「反応的すぎて」反省することが多々ありました。また筆者のような反応的な人ばかりで議論すると、まとまらない、結論に至らない、とか、どこまでも「思いつき」ばかりで有用なアイデアが出てこない、といったことも多くありました。同じようなタイプが集まって似たような意見しか出ない会議も、良い場とは言えないでしょう。

もし、上記のような場面に思い当たることがあるとしたら、あなたの出番です。あなたは自分の考えを発信するまでのスピードは早くなくても、他の意見を受け止めるまでのスピードは遅くないはず。まずは、発言する人のほうをちゃんと見て、うなずいたり、メモを取ったり、傾聴の姿勢を見せることです。そして、少しファシリテーター的な役割を意識してみてはどうでしょうか。たとえば、複数の発言の共通項を見つけてまとめてみたり、あるいは聞いている人の理解にばらつきが出そうな意見をかみ砕いて言い換え、確認をとってみたり。あなた独自の意見はすぐ出なくても、誰かの意見に被せた発言をしてみることで、「黙っている」状態からは脱することができるのではないでしょうか。

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