金正恩は錯綜する米国の動きに戸惑っている 1カ月に2度の中国訪問が意味すること
北朝鮮の金正恩労働党委員長が5月7日、習近平国家主席と首脳会談を行うため大連に飛んだのは、まさにサプライズだった。金委員長が習主席と会うのは今年で2回目。4月27日に歴史的な南北首脳会談を行った直後であり、しかも、ドナルド・トランプ米大統領との直接会談に向けて各種外交の嵐が吹き荒れている真っ最中である。
今回の首脳会談は異例の展開
金委員長は2011年に北朝鮮の最高権力者になってから6年間にわたって、海外首脳と接触するのを避けてきた。その金委員長が、またもや習主席と会談を持ったこと自体が、極めて意味深だ。2度目となる今回の中朝会談について、NKニュース有料版は次のように分析する。
●北朝鮮が最近、国家戦略を転換したこと、また先日行われた南北首脳会談の結果によって、中国とふたたび首脳会談を行う必要が出てきた。
●今回の首脳会談は異例の展開といえる。最高権力者の地位に就いてから一度も首脳外交を行ったことのなかった金委員長が、今年に入って3回も首脳会談を行い、うち2回は中国の国家主席と会っている。
●中国と北朝鮮では国営メディアの報道内容に違いがある。中国は非核化に焦点を当て、北朝鮮は中朝関係に的を絞った。
●米朝首脳会談を前に米国の北朝鮮に対する外交姿勢は大きく揺れ動いている。こうした状況に懸念を強めた北朝鮮が万が一に備え、中国から確実に支援を取り付けられるようリスクヘッジに動いた可能性がある。
●中国政府としては、中国が北朝鮮問題を左右するキープレーヤーであることを世界に見せつけておきたかった。
習主席と金委員長の1回目の首脳会談は今年3月26日に行われている。2回目となる今回の会談のおよそ40日前だ。金委員長は最高権力者の地位に就いた2011年から2017年まで、一度も首脳外交を行ったことがない。にもかかわらず、今年に入ってから2度も習主席と会っている。すでに述べたように、そもそもこれ自体が驚くべき展開だ。1度目の会談からわずか1カ月強で2度目の会談が必要になった背景には、何があったのだろうか。
この間、北朝鮮では大きな出来事が2つ起きている。1つ目は、戦略核兵器と経済を同時開発する「並進路線」を公式に転換したことだ。4月20日に核とミサイルの実験を中止するとの公約を発表し、北朝鮮は今後、経済建設に総力を結集していくと宣言した。金正恩体制が大幅な譲歩を行ったことを示すものであり、米国と交渉する意思があることについて一段と強いメッセージを送る狙いがあったとみられる。