金正恩は錯綜する米国の動きに戸惑っている

1カ月に2度の中国訪問が意味すること

1回目の中朝会談でも同じようなことは起きており、北朝鮮が非核化の意思を示したことを報じたのは中国メディアだけだった。

注目すべき例外は、南北首脳会談を受けて行われた報道で、このときは「朝鮮半島の完全な非核化」をうたった南北共同宣言が、朝鮮労働党の機関誌『労働新聞』に全文掲載された。

習主席に敬称をつけるのをやめた

中国メディアが報じながら北朝鮮メディアが報じなかった点は、ほかにもある。中国メディアは、習主席が「朝鮮半島の非核化に向けて北朝鮮と米国の間で対話や協議」が行われるのを支持すると述べたことを伝えているが、北朝鮮メディアはこのことに触れていない。

北朝鮮のKCNAが習主席に対して、敬称をつけるのをやめた点も気になる。北朝鮮メディアでは通常、「氏」を意味する韓国・朝鮮語の敬称は、金一族に対してのみ用いられている。だが、習主席に対しても3月に1度目の会談を行ってから2度目の会談を行うまでの間は、この敬称が用いられていた。極めて異例の扱いだ。その敬称が今回、消えたということは、2回目の中朝会談が北朝鮮にとって、あまり満足のいくものではなかった可能性がある。

今回、金委員長に同行したのは、妹の金与正(キム・ヨジョン)氏のほか、朝鮮労働党で外交部門を統括する李洙墉(リ・スヨン)党副委員長、金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長兼統一戦線部長、李容浩(リ・ヨンホ)外相、崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官。このうち、先月の南北首脳会談に同席していなかったのは、崔外務次官だけだ。

習主席との首脳会談に同席したのは、李洙墉党副委員長、李容浩外相、金英哲党副委員長兼統一戦線部長の3人。妹の金与正氏の姿がなかったことについては、外交経験があまり豊富でないため、との説明も成り立つかもしれないが、崔外務次官がその場にいなかったのは、非常に興味深い。

崔氏は、最近まで北朝鮮外務省で北米局長を務めていた。そんな経歴を持つ崔外務次官が大連に行きながら習主席との会談に同席しなかったということは、中朝の間で米朝関係をテーマにした別の会合が持たれていた可能性もある。

3月に初めての首脳会談を行って以降、中朝外交の頻度は増している。金委員長は中国の王毅外相と平壌で会談を行ったほかに、中国共産党中央対外連絡部の宋濤部長と2度会談している。また、駐北朝鮮中国大使とも1度面会し、北朝鮮内の観光バス事故で中国人観光客が死亡したことについて哀悼の意を伝えている。こうした会合はどれも、北朝鮮メディアによって極めて好意的に報じられた。

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