アルコール依存症と診断するためには、世界保健機関の診断基準(ICD10)が使われる。過去1年のある期間に、以下の6項目のうち3項目以上を満たすとアルコール依存症候群と診断される。
② 飲酒行動の抑制の喪失
③ 離脱症状(アルコールが切れたときの身体症状 発汗、頻脈、頭痛、高血圧、吐き気や発熱など)の出現
④ 耐性の増大(飲酒量が増えていくこと)
⑤ 飲酒中心の生活(他のことが犠牲にされていく)
⑥ 有害な飲酒に対する抑制の喪失
この基準に基づいて診断されるアルコール依存症者は、わが国には約110万人いると推定されており、アルコール依存症としての治療を受けているのは4万人程度に過ぎないと報告されている。アルコール依存症者が依存症としての治療の対象になる機会がそれ程少ないということを表している。
その一因として、アルコール依存症は家庭生活や社会生活が破綻し、廃人のようになりまともな生活が送れない状態であるという思い込みが、社会全般に浸透していることがある。しかし、実際には生活の破綻がそれほど深刻な状態ではなくてもアルコール依存症である患者は相当数存在している。このことは医師や看護師など医療者であってもよく知らない人も多い。まだまだアルコール依存症に対しての医療者の関心は低く、理解も十分ではないというのが現状である。
飲み過ぎを知るためのテストがある
アルコール依存症やその予備軍、飲み過ぎ(アルコール使用障害)を知るためのスクリーニングテストとして、AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test、アルコール使用障害テスト)がある。
世界各国でAUDITは使われているが、その点数による評価は国によって異なる。わが国では、AUDITで8~14点なら問題飲酒者として減量の指導が勧められ、15点以上ならアルコール依存症が疑われるとして専門医の受診が勧められている。とくに、20点以上ではアルコール依存症の可能性は極めて高くなるため、専門医への受診が強く勧められる。
もし、自分でも酒を少し飲み過ぎかなと思っているのなら、ぜひ一度このテストを試してみてほしい。また、家族や身の回りに飲み過ぎの人がいて困っているのであれば、このテストをやってみることを勧めてほしい。
一般に、大量に酒を飲む人、すなわち呑兵衛は、自分の周囲に飲む人が多くいるために、自分ではそれ程大量には飲んでいない、自分の飲み方は普通だと考えている場合が多い。
だが、このテストで15点以上であれば、日本の男性の中で酒飲みとして上位5%にあたることになる。上位5%といえば、入試などで使われる偏差値で表すと66以上に相当する。いや、むしろ飲酒をコントロールできない下位5%として、偏差値33以下と表現するべきかもしれない。現実をこのように知ると、自分の飲酒量が日本人全体の中でいかに多いかに気づくことになり、驚かれるのではないだろうか。
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