進化した靴下は普通の靴下と何もかもが違う 一流アスリートが愛用する最新靴下の秘密

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ただ、こうしたニッチなスポーツ用靴下の市場規模は限られており、1社あたりの売上高は2億~3億円が限度といわれています。

そこで同社は、あまりソックスを履かないスポーツ分野への展開を進めています。現在、陸上競技は素足でシューズを履くのが一般的ですが、「靴下の機能次第では成績が良くなる余地はある」(吉村社長)とのこと。伸びてほしいところはゆとりができ、伸びてほしくない土踏まずの部分はサポートするアスリート向けソックスです。

また、最近若者の間で流行りつつあるボルダリング用靴下にも挑戦。従来は裸足に直接靴を履いて登っていたのですが、足裏から出る汗で靴が傷み、臭いもひどいなどの悩みがありました。一度コーマの靴下を履くとその効能がわかり、プレイヤーの間でボルダリング向け靴下の人気が高まっているそうです。

高齢者用靴下とは?

もうひとつ成長市場として期待しているのが、高齢者用靴下の分野です。通常の靴下は筒と足先は鈍角ですが、その部分が鋭角になるように編み方を工夫しました。置いたときに履き口が自然に開くように設計され、かかとには引っ張りやすい持ち手がついています。

体が硬くなった高齢者も片手で履ける「らくらく博士」(写真:コーマ)

体が硬くなった高齢者も片手で履ける製品で、「らくらく博士」と命名しました(税抜き1500円)。身体の一部として負担がないよう無理なく履け、ずれ落ちにくいのにゆったりした設計です。前屈がしにくい妊婦さん方にも好評とのこと。これもコーマの技術で、表糸は綿100%、編み生地の伸縮性を出しているからこそ生まれる履き心地なのです(この商品で日本靴下工業組合連合会理事長賞も受賞)。

「らくらく博士」の構造(写真:コーマ)

「後追いをせずに我慢して商品開発をしたことが、結果として先回りになりました。技術開発で苦境を乗り越えてきた経験が、難しくても挑戦しよう、という社風になっています。アスリートをはじめ、アクティブに働く人たち、そしてお年寄りにも、パフォーマンスの上がる靴下を引き続き提供していきたいと思います」と吉村社長。

90年の歴史、靴下全工程の自社一貫製造といった特長に加え、このチャレンジ精神が同社を今後とも支えていくと思いました。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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