おとなしい子が、英語が苦手だとは限らない ポイントは仲間と対話できているかどうか

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発語のチャンスとしては、弟にお母さんをとられることが多くなり、自分に注目をしてもらう必要があったためでしょう。K君はそれ以降、とてもおしゃべりな男の子になり、お母さんの心配は無用となったのでした。

英語の発語にも子どもが溜め込む、そして熟成する時間が必要です。溜める時間の長さには個人差がありますから、よくある広告のような「○時間聞けば英語は話せるようになる」などというのは真実ではありません。母語と同じように、英語の発語にも個人差があり、発語しない子に無理にさせようとしても、子ども自身の英語としては定着しないのです。

リラックスした状態ならば輪の中にいる必要はない

ただ、前述のMさんと違って、仲間の対話に入ってこない子は要注意です。仲間に入っていない、人とのつながりが切れてしまっている状態だと、そこに学びが生まれることがないからです。子どもの対話的な学びには、グループ性が重要です。子ども同士が対話できる、安心して質問できる環境や人数などの配慮が、最初の時点では重要です。そして、それを作るのが指導者の大切な役割となります。

一方、輪の外にいながらも、仲間の話に耳を傾けている子どももいます。輪の中に入らず、部屋の隅っこにいたり、ピアノの下に隠れていたりする子です。子どもの場合、自分の身体や精神がリラックスした状態でこそ、物事を受容することができます。

ですから、たとえピアノの下にいてもリラックスした状態であれば、仲間とつながっていて、耳は仲間の対話に傾けており、その内容を受容していることがあるのです。逆もしかりで、緊張している子を無理やり仲間の輪に参加させても心を開くことはできず、そこに学びは生まれません。

子どもには一人ひとりに個性があり、興味や関心、学ぶペースもそれぞれに異なります。特に言葉の習得の場合、子ども自身の個性をうまく生かすことが、学びにつながるようです。個々の特性を大切にすると、大人が考えるのとは違う方向に興味や関心を示したり、想像以上に大きくジャンプしたりして学ぶこともあるのです。

また、子どもの学びには、どのような科目でもそうですが、「仲間との対話」だけでなく、「対象となる学問・教材との対話」「自己との対話」が必要です。学びには、いい仲間、教材、そして個々の能力を引き上げてくれる指導者が必要なのです。

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