缶コーヒーと「ガテン系」の切れない甘い関係 缶コーヒーをめぐる熾烈なシェア争いの実態

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職人たちがよく飲むと口をそろえたのが、缶コーヒーだ。ミルクや砂糖が入った甘いコーヒーが体の疲れを癒やすのに相性が良く、中でも185ミリリットルのいわゆるショート缶は、「タバコで一服しながら飲むのにちょうどいいサイズ」(職人)という。実際、記者が訪れた30分ほどの間にも、数本が売れていった。

「自販機で売れる商品の3〜4割ほどは缶コーヒー」(大手自販機ベンダー)とも言われる。「工事が始まって仮囲い(工事現場を囲む白い壁)が立ち上がると、それを見つけた飲料メーカーやベンダーの営業マンが売りこみに来ることもある」(現場所長)。

缶コーヒーと自販機はその誕生時から切っても切り離せない関係にある。全国清涼飲料工業会によれば、自販機が日本で本格的に展開され始めたのは1962年。瓶入りのコカ・コーラの販売が始まりだ。缶コーヒーは1969年にUCC上島珈琲によって世界で初めて開発された。翌1970年の大阪万博で人気になり認知度が高まったという。

その2つを結びつけたのがポッカコーポレーション(現ポッカサッポロ)だった。同社は1974年に、当時としては初の温かい飲料と冷たい飲料を同時に販売できる自販機を開発、缶コーヒーを季節にかかわらず販売するようになった。

UCC、ダイドーとの販売競争が始まるが、翌1975年に日本コカ・コーラが「ジョージア」で缶コーヒー市場に参戦。するとその資本力と、全国にすでに大量展開していた自販機を足がかりに一気にシェア首位を獲得した。

ジョージアはガテン系を狙う

コーヒー飲料市場は国内で8800億円ほどある。1兆円を超える茶系飲料に比べれば見劣りするものの、炭酸飲料(5500億円)の1.6倍、ミネラルウォーター(3600億円)の2倍以上の規模を持つ(富士経済調べ)。

このうちジョージアブランドのシェアは20%とトップを維持(英調査会社ユーロモニター調べ)。自販機でも213万台のうち、約70万台が日本コカ・コーラグループのものになっているなど、圧倒的な強さを誇る。

その缶コーヒーにとって建設現場は「最大の市場」(サントリー食品インターナショナルで『BOSS』を担当する大塚匠・ブランド開発第二事業本部課長)だ。

各社のCM戦略からも狙いが透けて見える。現在放映されているジョージアのCMは、建設作業員を演じる俳優の山田孝之氏が缶コーヒーで休憩をとりながら、システムエンジニアやトラック運転手など「世界は誰かの仕事でできている」ことに思いを馳せる内容だ。

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