缶コーヒーと「ガテン系」の切れない甘い関係 缶コーヒーをめぐる熾烈なシェア争いの実態
東京タワーからほど近いビジネス街の一角で、およそ50人の職人が働き、8階建てのビルが建設中だ。この建設現場には2台の自動販売機が設置されている。
午後の休憩時間になると、乾いた喉に流し込む飲み物を求める職人が後を絶たない。ある職人は「午前、午後に30分ほどの休憩時間があるが、外に出るのもおっくうなので、飲み物は自販機で済ますことが多い」と話す。
普通の自販機にはおよそ150〜200本の飲み物が入っている。一般的な路上の自販機では「月に1回しか商品を補充しないこともざらにある」(ある自販機ベンダー)が、この現場では飲み物を1週間に2回ほど補充するという。実際に取材で訪れた時には「売切」の赤いランプがいくつも点灯していた。
この現場では現在、ビルの躯体を建設中だ。躯体が出来上がると、各フロアで一斉に設備や内装工事を行うため、200人規模の職人が押し寄せる。人数が増えた場合に備え、建設業者は自販機を追加で設置することも検討しているという。
設置は無料、売り上げで回収がビジネスモデル
普段何気なく目にしている自販機だが、国内には213万機(日本自動販売機工業会、2016年)の飲料自販機があり、金額にして1.7兆円ほどを売り上げている。5兆円を超えるとされる飲料市場において、約3割は自販機を通じて販売される計算だ。
こうした自販機は、飲料メーカーの子会社や専門の自販機ベンダーが設置している。メーカーやベンダーは、ビルや路上、今回のような建設現場に自販機を無料で設置し、設置側には電気代だけを負担してもらう。メーカーやベンダーは飲み物の販売で利益をあげ、そこから本数に応じて十数パーセントの手数料を設置者側に支払う仕組みだ。
この建設現場では、PETボトルを含めたすべての商品がワンコインで買えるように、値段は100円に設定されていた。「自販機で儲ける気はなく、むしろ少し安い値段で買えるようにしている」(現場所長)。
一般的な自販機の商品は120円から160円程度で売られているが、商品の仕入れ値はそのままに建設業者側の利益を圧縮する形で、安く飲料を提供している。自販機の設置は福利厚生の一環でもあるという。