マツダが瀬戸際から復活を果たせた根本理由 車種の絞り込みと混流生産が競争力を生んだ
進退窮まったマツダは、10年後のグローバルマーケットを維持するのに最低限必要な車種をギリギリまで絞り込んだ。それはZoom-Zoomを体現するために必要な車種構成でもあった。
・デミオ(日本、アジア、欧州)
・アクセラ(全世界)
・アテンザ(日本、北米)
○SUVライン
・CX-3(日本、アジア、欧州)
・CX-4(中国)
・CX-5(全世界)
・CX-9(北米)
○スポーツカーライン
・ロードスター(日本、北米、欧州)
この8車種のどれを欠いてもZoom-Zoomと世界戦略が維持できない。人間困り果てたときは知恵が出るもので、マツダはここでコモンアーキテクチャーと混流生産という技術を確立した。
コモンアーキテクチャーと混流生産
コモンアーキテクチャーはプラットフォーム流用の反省点から作り出された。プラットフォーム流用とはつまり部品の流用だ。ところが先ほどのエンジンの例を見ても明らかなように、部品を流用すると各車に最適化はできず妥協することになる。性能だけではなく開発や生産性、商品力に歪みが生じるのだ。
マツダはコモンアーキテクチャーを説明するとき、「固定と変動」と言う。固定する部分を徹底的に同一にし、それ以外の部分を変動させる。
たとえば排気量の異なるエンジンに、部品共有を優先して同じインテークマニホールド(エンジンの吸気管)を流用するとしよう。すると燃焼室体積と吸気系の体積比率が変わる。こうなるとまずちゃんと燃えるかどうかからやり直しだ。燃焼の制御をゼロベースでやり直すことになる。
現在のエンジンは緻密な燃焼制御を必要としているので、むしろ基礎開発時に使ったシミュレーションの数理モデルを維持するほうが、開発コストが下がる。荒っぽく単純化してしまえば部品の流用より、仕向地ごとの規制をクリアするために大量に用意しなくてはならない制御プログラムの流用のほうがコストダウン効果は大きいのだ。
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