円谷プロ「ウルトラマン」、完全勝訴の全内幕 米裁判所が1976年の版権譲渡書は偽物と判断
よく似た“モノマネコンテンツ”ではなく、タイトルも中国語で明確にウルトラマンを示していたが、7月19日になると円谷プロダクションが「当社は一切関知しておらず、本件映像作品は当社の許諾・監修等なく制作されているものです。当該発表会及び映像におけるウルトラマンキャラクターの利用方法、態様等は、ウルトラマンブランドを著しく毀損し、断固として非難すべきものであり、到底認められるものではありません」との声明を発表した。
これに対し中国企業側は、ウルトラマンの海外における版権を持つ企業からライセンスを受けて制作したものだと反論。今年2月には劇場公開を強行した。
米国での事例を含め、「76年書面」をめぐる裁判では、海外版権契約の有効・無効に関して争われてきたが、著作権そのものに関しては係争がなかった。つまり、旧作の版権が違法に取引されたのではなく、“公式なライセンスを元にした新作”とされる作品が、著作権者が承知しないまま制作されたという点で極めて特殊な事例だったといえる。
上訴の可能性は残っているが…
円谷プロダクションは著作権を侵害した映画の放送、提供、宣伝の停止、謝罪文の公開と損害賠償を求めて訴訟中であるが、米国で見つかった新たな証拠や証言録取が決め手となる可能性が高い。ライセンスを現在保有しているユーエム自身が、新作を制作する権利を有しているとは“認識していない”と宣誓証言しているためだ。
なお、カリフォルニア州連邦地裁の判決に対する上訴の可能性は残っている。TMI総合法律事務所の原雅宣氏もその可能性は認めるが、以下の点から難しいと予想しているという。
契約を結んだとされるソンポテ氏が米国での裁判に出廷せず、証言を拒否しており、新たな証拠が登場する可能性が極めて低いこと。そして、“すべての権利を無期限に”有しているはずのチャイヨー・プロダクションに1976年以降に結んだとされるライセンス書類が残されていたこと(書面が有効ならば、新たなライセンスは不要である)など、それまで明らかになっていなかった、円谷プロダクションにとって有利な証拠が出てきているためだ。
「76年書面」をめぐっては、“当時、円谷プロダクションが経営に行き詰まって海外ライセンスを手放した”などの流言飛語もネットなどでは飛び交ったことがある。失った時間は取り戻せないが、これまで「オファーはあっても応じることができなかった」(高橋氏)という旧作を交えたライセンス事業の発展に期待したいものである。
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