シンガポールに「待機児童」などいないワケ 主婦家庭でも保育園入園可、日本は時代遅れ

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大卒女性が出産で仕事を辞めて専業主婦になると、2億5000万円ほどの生涯賃金を失うというデータもあります(「国民生活白書」2005年)。もちろん仕事を辞めて主婦になることを否定しているわけではありませんが、これによれば、大卒女性が仕事を中断することなく、38年間働き続けた場合の生涯賃金は、退職金込みで約2億7700万円です。育児休業を2年間取得して36年間働く場合、失うおカネは約1900万円と比較的少なく、生涯賃金は約2億5800万円になります。

一方、もし出産後退職して8年間のブランクを経て再就職する場合、生涯賃金は正社員として復帰するケースで約1億7700万円、パートとして復帰するケースで約4900万円です。さらに、結婚後は専業主婦というケースで約2200万円と、ずっと働き続ける場合と比べると2億5000万円ものおカネを失うことになるのです(28歳で第1子出産、31歳で第2子出産と仮定)。

日本でも共働きなら「世帯収入約70万円」は無理じゃない

こうした傾向は、最新のデータでも明らかです。夫婦共働き世帯の1カ月の平均世帯収入は、妻の収入が8万円以上の家庭で月71万0048円、妻の勤め先収入が8万円未満の家庭(いわゆるパート世帯)で月56万8321円、収入が夫のみ(夫婦のみ世帯)の家庭で月44万2451円と、月収も大きく変わります(厚生労働省の家計調査、2017年)。一方、シンガポールではパートタイムではなくフルタイムで働くカップルが多いので、1カ月の世帯収入の中央値は70万円程度です。つまり、日本もカップルがともにフルタイムで働けば、ほかの先進国と同程度の賃金を稼ぐことができるのです。

キャリアを継続させると、昇進や退職金なども変わってくるため、生涯賃金の差はより大きくなります。女性自身もキャリアの「温存」「発展」を考えるとともに、国や企業も出産後の復帰をうまく促していく必要があるのではないでしょうか。

その点、シンガポールは国を挙げて、女性が働くことを強く促す制度設計になっています。産休、育休の16週間分は有給、もしくは会社や政府からおカネを受けることができます。人によっては半年から1年といった長期休暇をとる人もいますが、仕事を変える場合などは、無給で再度面接を受けるという人もいます。

そもそも長期育休向けの給付がほとんどないので、育休期間が長期化すると収入が途絶えるうえに子どもにおカネがかかるため、生活が厳しくなります。さらに、CPFという日本の確定拠出年金のような仕組みがあり、毎月の積み立ては雇用主との折半となっています。自らの分は自動天引きになっているため、働かないとその分積み立てられないので、将来もらえるおカネも少なくなります。その結果、自ずと早期復帰を選択するようになるのです。

一方、日本では産休に加えて育休があり、最長で子どもが2歳まで給付を受けられるようになりました(2017年10月から)。また、産休・育休中の社会保険料も免除になります。

母子のことを考えると日本の制度は手厚くてよさそうに見えます。しかし、キャリアの面から考えると、早期復帰したほうがスムーズに仕事に戻ることができます。早期の職場復帰が当たり前のシンガポールに対して、育休を2年に伸ばした日本は世界の流れに逆行しているのではないでしょうか。育休を伸ばすよりも、在宅勤務など働き方に柔軟性を持たせたり、保育園などの受け皿を整備したりするほうが、働く女性をサポートできるのではないでしょうか。

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