日米貿易交渉入りで円高が進むのは必然だ

想定どおり日本が追い込まれた日米首脳会談

ちなみに円のREERは1年前に大幅割安だったものが、さらに小幅下落しているのが実情である。現状では、監視リストに掲載されている国の通貨の中で、長期平均との対比でしかるべき方向、すなわち、割高ならば下落、割安ならば上昇へと動いていない唯一の例が円である。しかも対米貿易黒字や経常黒字(%、対GDP)の大きさも1年前からほとんど変わらなかった。報告書にも対米貿易黒字が「過去4年間でほとんど変わっていない」との記述がある。要するに円は米財務省の望むように調整が進まず、監視リストの判定基準でも改善が進んでいない。こうした中で、二国間通商交渉が始まれば、やはり日本側は「気まずい」というのが率直な印象である。

日本銀行としては緩和の継続が既定路線だが(写真:ロイター/Martin Acosta)

さらに、今回の報告書ではもう1カ所、気掛かりな部分があった。前回2017年10月分の報告書では日本経済に対する総論として「日本は緩和的な金融政策や柔軟な財政政策に裏付けされた(underpinned by accommodative monetary policy and flexible fiscal policy)潜在成長率以上の成長を活かし、構造改革を進めるべき」との記述があった。安倍政権になってから公表された2013年4月以降の計10回の報告書を振り返ると、書きぶりが少しずつ変わりながらも「財政・金融・構造政策など、あらゆる政策をうまく補完しながら経済を支えるべし」とのトーンが続いていた。

日銀の緩和政策を許容しない可能性も見えた

しかし、今回は「日本は堅調な成長を利用し、国内経済活動の持続的な拡大をサポートする構造改革を推進すべき」と記述されており、実体経済の前提とされていたような緩和的な金融政策や財政政策についての言及が控えられた。「堅調な経済」の前提として裁量的な財政・金融政策に依存するのをやめ、構造改革を進めよとの意図なのだろうか。うがった見方をすればキリがないが、場当たり的に過激さを振りまくトランプ政権の通貨・通商政策が続いているだけに、未曾有の規模で継続される金融政策についても物言いをつけてくる可能性がないとは言い切れない。

金融政策は国内目的で実施されている限り、他国から干渉される筋合いはないとはいえ、米国が金融緩和を快く思っていないのだとすれば、円高局面で日銀の挙動を制約するような話が出てこないか注視する必要がある。今後始まる二国間交渉において為替条項にかかわる協議が浮上した場合、市場参加者は日銀の金融政策運営への影響を懸念するはずだ。

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