日米貿易交渉入りで円高が進むのは必然だ 想定どおり日本が追い込まれた日米首脳会談

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2016年4月に掲載が始まった監視リストだが、若干の入れ替えはあるものの、中国・日本・韓国・ドイツの4か国はうれしくないオリジナルメンバーとして常に名指しされている。改めて米国の基準を確認しておくと、(1)対米貿易黒字(年間200億ドル以上)、(2)経常黒字(GDP比で3%以上)、(3)一方的かつ継続的な外貨買い為替介入(12カ月でGDPの2%以上の額)のうち、2つを満たすと「監視リスト」入り、3つを満たすと「為替操作国」として認定することになる。

なお、条件を2つ満たさなくても「米国の貿易赤字において巨大かつ不相応なシェアを占めている」場合は監視リストに入る。この条件は(1)しか満たしていない中国を意識したものと考えられる。周知の通り、トランプ政権の通貨・通商政策の評価軸はあくまで「対米貿易黒字の大きさ」である。3つの基準の重要性は等しいものではなく、(1)の重要性が突出して大きいことが想像できる。

「円の立ち位置」に米側が並べたてた不満

監視リスト掲載国でとりわけ米国の関心が大きいと思われる中国・日本・韓国・ドイツのうち、韓国には先般のFTA交渉で一撃を見舞ったばかりであり、中国とはもともと為替問題で神経質な交渉が続いており、通商面でもつば迫り合いに事欠かない。ドイツに関しても、(対EUという次元において)通商面での対立が既に激化している。ちなみにユーロ相場は過去1年で急騰したが、今回の報告書では「それでも歴史的に見ればまだ低い」とあまり納得していない。中間選挙を控え、また、中長期的には2020年の再選を見据え、トランプ大統領が為替相場に絡めて何らかのアピールを考えているのだとしたら、日本(円)だけお目こぼしというわけにはいかないだろう。

では、今回の報告書で日本についてはどのような記述がなされたのか。2018年に入ってからの円高に言及しつつも、2017年から2018年2月までの間に実質実効為替相場(REER)が2.4%下落していると指摘され、現状の評価としては「(REERは)過去20年平均対比で25%割安である」と明記された。また、名目実効為替相場(NEER)についても2013年上半期以降、長期平均と比べてみると割安、との記述が見られ、実質・名目共に現在の円相場水準に不満な様子がうかがえる。

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