「男の介護教室」で教えられる超実践的スキル 追い詰められる前に知っておきたい

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一方、石巻は漁業も盛んです。遠洋漁業をしていた人は、若いときは同じ船の先輩たちの食事を全部作るんです。だから、魚もさばけるし料理は得意です。得意分野が異なる男性同士がお互いに教えあう光景も見られます。

――介護は肉体的にも精神的にも重労働です。男性の場合、一般的に言って家事経験が少ないことに由来する困難もある、と聞きますが、本当に人それぞれですね。

そうですね。妻や親の介護が必要になって初めて料理をしたとか、要介護となった母親の洋服をどこで買ったらいいかわからず困った、という声も確かにあります。

また、介護者同士の情報交換の機会が、女性に比べて少ない、という課題もあります。

介護者向けには、自治体が「カフェ」のように、お茶を飲んでおしゃべりしながら情報交換できる場を作ることがあります。ただ、そういう場に男性が参加する例は非常に少ないと思います。「おしゃべり」が得意ではないのかもしれません。

電気ポットとビニール袋で作れる料理も

――以前、ひとり親支援の取材をしたときも似た話を聞きました。シングルマザーは「一緒にお茶を飲みながら話しましょう」と誘うと来てくれるけれど、シングルファザーは来ない、と。あるシングルファザーは「参加してもらうためには、子どもと一緒に何かを作るとか、遊ぶといった企画を立てる」と言っていました。明確な目的があると集まりやすいのですね。「男の介護教室」は、どんなことをしていますか。

河瀬聡一朗医師

介護者と要介護者にとって必要な介護知識や技術を提供していますが、中でも要望の多い食については、ケアマネジャーや管理栄養士の方々と一緒に考えてお伝えしています。

たとえば、料理なら電気ポットひとつとビニール袋があれば作れる、おかずを紹介したりします。鍋を使わなくても、袋の中に材料を入れてポットの湯で暖めれば調理ができる。簡単で、洗い物が少ないから、やってみようという気になります。

あと「カロリーを“上げる”工夫」をお伝えすることもあります。健康な人向けの料理を作るときは、食べすぎないように、カロリーが多すぎないようにと考えてメニューを決めることもあるでしょう。

一方で、ほとんど寝たきりだったり、ずっと家の中で過ごしている要介護の高齢者は、食欲がわきにくいのです。ご本人が食べたい量を食べていただくと、カロリー不足になりがちです。そういった場合、たとえば「マヨネーズをちょっと加えて」カロリーを上げれば、食べる量をさほど増やさなくても大丈夫です。

加工食品や冷凍食品を上手く使ったメニューを紹介するなど、とにかく「毎日続けられそう」なことを重視しています。こうしたメニューは、教室を一緒に企画運営している管理栄養士さんが考えてくれています。

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