ネットフリックスを支える独自の「解雇」哲学 シリコンバレーでも際立つ企業文化

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マッコード氏はよく、6カ月後に同社がどのように進化しているかを、まるでドキュメンタリー映画を見るように具体的に頭の中で描いていたという。そして、その企業のあり方を実現するために逆算して、現在社内に必要なスキルと経験は何かを特定し、それに合わせた人材を選んでいた。

よくシリコンバレー企業は、ジグソーパズルのようにぴったりとスキルが合わないと採用されないといわれるが、マッコード氏はこれをかなりディテールにわたって行い、社員が全面闘争するのか、あるいは静かに仕事をこなすのかなど、どんな状態になるのかを社内で横断的に想像していた。

なんと自らも「解雇」されてしまった

これはまた、特定のスキルが必要でなくなると解雇されることも意味している。実際、マッコード氏の話には解雇の話題がたくさん出てくる。ネットフリックスは、創業時からどんどんビジネスモデルを変化させてきたのだが、それを人材の戦略的な入れ替えによって実現してきたことがよくわかる。

マッコード氏は、解雇は社員にとって驚くようなことではなく、またネットフリックスに在籍したことが履歴上有利になるという、個人の威厳を保つべきだと考えている。これについては、「ネットフリックスは、個人のキャリア向上には無関心」という社員からの批判もあるようだ。

ただし、付け加えておくべきは、マッコード氏自身も解雇の対象になったという事実だ。理由は不明だが、ネットフリックスがストリーミングへと舵を切るに際して、もはやフィットしないスキルの持ち主とされたともいわれている。

シリコンバレー的働き方とは、本当のところは何なのか。それは、毎日何時間働くかといった単純なことではなく、企業の進化、市場の変化などもっと複雑な要素と関係している。この本は、実態はそんなに簡単なものではないということを痛感させるのだ。

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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