ダメな管理職ほど「決断のスピード」が遅い 「速く決める」ためのシンプルなしかけとは?

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仕事は「決めて実行する」の繰り返しです。そこで、「いつまでにやるのか?」といった実行完了の期限だけでなく、その途中にあるいくつかの決断についても、「いつまでに決めるのか?」といった「決断のデッドライン(期限)」を設けるのです。さもないと、「○○が決まってないので先へ進めません」という言葉とともに仕事はずるずると遅れてしまうからです。

決断のデッドラインを決めるのは、「決める」という行為には多くの場合不安が伴うからでもあります。失敗することへの恐怖や、決めたことを実行することへの自信のなさ、自らが出した結論に対する反発を心配するなどの心の抵抗です。

不安心理によってガッチリと固められている心のガードは、「大丈夫だ」「自信を持て」「思い切って」などの言葉をいくつ並べても打ち破ることはできません。何らかの制約を課してでも、無理やり決めるという経験をしながら、決めることに慣れていく必要があります。

そのための強制力が「決断のデッドライン」です。車の運転に慣れるには運転するしかないのと同じで、決めることに慣れるには決めるしかありません。決めるから慣れる、慣れたからまた決めることができるという順番です。

速く決断することの最大のメリットとは?

決断のデッドラインを設定するのは、判断を間違ってしまったときのためでもあります。というか、人や組織はそもそもよく間違えます。

もし、時間ギリギリまで粘って決めたあとに誤りに気づいたとしても、すでに時間切れアウトで、何も手を打つことができません。しかし、早めに決めて早めに行動を起こしていれば、誤りに気づいた時点で修正をかけて再挑戦することができます。

ビジネス環境や顧客ニーズの変化、テクノロジーの進化などの外部要因の変化によって、決めたことが正解かどうかはやってみなければわからないことが多くなってきています。だからこそ米国企業は、「速く決めて、速く実行して、速く修正する」ことで、早く正解に到達しようとする合理的な考え方をとっているのです。決断のデッドラインとして期限を切ってビシバシと決めるのも、その理由からです。

一方、日本企業では、「慎重に決めて、決めたことをやりきる」という考え方がいまでも支配的です。環境変化のスピードが緩やかだった時代はそれでよかったのかもしれませんが、時代は完全に変わっています。環境が計画時点と変わっていたり、ビジネスに対する見立てが間違っていたりするにもかかわらず、「やりきる」ことを美徳として猛進してしまうと、求める結果を手にすることはできません。これではマズいということに気がついてきたとしても、責任体制が明確でないため、だれもそれを口にしないという集団無責任状態に陥ります。

「いくら決断のデッドラインを決めても、情報が十分にそろわなければ決められないのでは」と主張する人もいます。しかし、そのような人の多くは、情報不足を言い訳にして決めない自分を正当化しているのではないでしょうか。

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