ANAに学ぶ、企業サイトの「おもてなし」 東京五輪をたぐり寄せたのは滝クリだけじゃない!

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ただ、こうした狙いとは裏腹に、同サイトは企業のプロモーション色を極力排除した作りになっている。サイト上で企業色が出ているのは、オープニングムービーの最後とサイトの最下部に小さく表示されているロゴマークくらい。ANAの運営するサイトだと気づかずに見るユーザーも多い。

佐野氏は「ANAの海外での知名度を考えると、企業のプロモーション色を出しては振り向いてくれない。社内にも反対意見はあったが、日本の魅力を伝えることで自然とANAを知ってもらえる形を目指した」と言う。

五輪招致でも一役

同サイトには、ANAの国内線に1万500円均一で乗れる外国人旅客向けのフェアの、小さなバナーが付いている。サイトからの流入効果により、このチケットの売れ行きは前年比で約7~8倍になっているという。国内線の普通運賃は札幌―沖縄では6万円程度するため、この料金では利益が出ないが、まずはANAに乗ってもらう狙いだ。

「IS JAPAN COOL?」の質の高さは、日本中に興奮をもたらした2020年の東京五輪決定によっても証明された。

「DISCOVER」は五輪招致でも力を発揮した

第1弾「DISCOVER」のオープニングムービーは、東京五輪の招致PRフィルムに選定され、7月のスイス・ローザンヌでのプレゼンテーションの際などに流された。同サイトの動画が東京の魅力を伝えたことが、東京五輪決定に影響を与えたかもしれない。

企業色を出さないことで、サイトとしての魅力や閲覧者からの共感度を高めたANAのアプローチ。「無欲の勝利」とも言えるこの手法、企業のウェブ戦略の参考となる点が多々ありそうだ。

桑原 幸作 東洋経済 記者
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