三菱自が「過ちに学ぶ研修室」まで作った理由 JALは「御巣鷹山事故」の教訓を学び続ける

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研修施設のパネルでは、これまでに起こした不祥事の概要が解説されている(記者撮影)

燃費データ不正は大半の社員の記憶に新しいが、リコール隠し問題からは十数年が経過。現社員の多くにとっては入社前の出来事だ。資本提携先の日産自動車から三菱自動車に送り込まれた山下光彦副社長(開発・品質担当)が「(リコール隠しに対し)ベテランを除くと現役のほとんどは実感がない」と認めるとおりで、社員の意識啓発や記憶の風化防止に施設を役立てるのが狙いだ。

研修室の設置は、燃費データ不正問題を受け三菱自動車が自ら考案した再発防止策の一環でもある。この問題の特別調査委員会で委員を務めた元トヨタ自動車理事の八重樫武久氏は「これまでの不正問題のときにはなかった試みで、変わろうとする姿勢の表れ」と前向きに評価する。ほかにも、三菱自動車では過去に起きた不祥事を題材にした教育プログラム「失敗に学ぶ」を開発部門の社員を対象に実施するなど、社内改革を進める。

研修施設に「魂」を入れられるか

ただ、三菱自動車では不祥事が起きるたびに背景や原因を調査し、再発防止策が講じられてきたが、結果的に功を奏さなかったのも事実だ。2000年のリコール隠し問題発覚後に公表された再発防止策には、次のような言葉が並ぶ。「法令順守の徹底」「オープンな企業風土の醸成(社員の意見・提案を取り上げるシステムの見直し)」――。

八重樫氏は「これまでも改革のベースになるものは提案され実行していたが、形骸化していた。委員会でも再発防止策を検討したが、結局のところ、従来取り組んできたものと共通していることに気づいた。そこで再発防止の指針のみ示し、具体的な再発防止策は書かないという異例の対応にした」と報告書作成の経緯を明かす。そのうえで、「今回も、研修室を作っただけでは意味がない。社員が『やらされる』意識でなく、自分のこととして行動しなければ、再び不正を繰り返さないとも限らない」と指摘する。

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